前述した計算法を真空蒸着装置に適用します。ただし、ここでは問題を簡単にすることとします。簡素化したモデルを図10に示します。
i面を1面、j面を2面と表記します。1面について、式36は次式となります(式37)。
2面については、1と2を入れ替えて次式となります(式38)。
T1とT2が決められていて、1面と2面との間の熱のやりとりを求める場合には、式37と式38の連立方程式を解き、J1、J2を求めて、式35から熱の移動量を導き出します。しかし今回の場合、T1は加熱したい温度であり既知ですが、T2は部屋の空気の温度T∞とチャンバー外側表面の熱伝達率hで決まるため未知数となります。つまり、未知数はJ1、J2、T2の3つになります。もう1つ式を作ります。図10のQ2は、熱伝達で部屋の空気に移動すると考えて次式で表せます(式39)。
式35から、Q1は次式となります(式40)。
1と2を入れ替えて、Q2は次式となります(式41)。
ここでは、式39と式41が等しいとしましょう。
これで、式37、式38、式42の連立方程式ができました。ですが、かなり困りものです……。ふく射の問題は、温度の4乗の項が出てきて4次方程式となります。4次方程式の解を陽の形で表すことができるとのことですが、この方法は止めておきましょう。
あらためて、以下に示す3つの式を作ります(式43〜45)。
そして、式46が最小になるように未知数を「Excel」のソルバー機能で求めます。
形態係数は1面(お皿)が放射する熱の全量が2面(チャンバー)に届くと考えて、次式とします(式47)。
式27を使うと、F21は以下となります。
しかし、少し変ですね……。図10を見てみると、2面からの放射のほとんどは2面に届きますが、今回のモデルはこの点を考慮していません。よって、近似計算となります。面の数を増やすと厳密な計算となります。
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