日本交通 取締役兼GO 代表取締役会長の川鍋一朗氏は「ウェイモはわれわれの想像以上に慎重だ。むしろわれわれより慎重かもしれない。ウェイモが15年間大きな事故なく続いてきたのもそういう要因があるかもしれない。文化的に非常に合うと私は感じている。彼らは誇張表現などを使わず、『ステップバイステップ』とよく言う」とコメントした。
ウェイモは米国ではカリフォルニア州サンフランシスコ/ロサンゼルス、アリゾナ州フェニックス、テキサス州オースティンなどでサービスを提供しており、運行は週20万回を超える。アプリでドライバーのいない自動運転車が配車され、それに乗って行きたいところに行けるサービス体制が整えられている。サービスエリアは拡大中で、ジョージア州アトランタ、フロリダ州マイアミ、ワシントンD.C.でも間もなくサービスを提供する。
日本でも米国と同様にサービスを提供するかという質問に対して、ウェイモ 事業開発部門・パートナーシップ部門 責任者のニコール・ガベル氏は「まずは手動で運転し、データを集め、どのように日本の道路環境で運転していくかを定義する。標識も交通ルールも異なる。次の段階があるとすれば、ドライバーが運転席にいて、ステアリングを操作できる状態で走らせる。ステップバイステップで始めていく。まずは初期のテスト段階にフォーカスしている」と回答した。
自動運転技術でタクシードライバーは不要になるかという質問に対し、川鍋氏は次のように回答した。
「2000年ごろ、雇用の未来を分析した論文が米国で話題になった。刺激的な表現でタクシードライバーの仕事はなくなると予想していたが、実際にそれは起きなかった。タクシー会社にもよるが、ドライバーは辞める人と新たに入ってくる人で年間5~10%が入れ替わっており、毎年新人ドライバー教育をしている。年間にドライバーの人数の10%以上のペースで自動運転車を導入しない限りは今いるドライバーの仕事を奪うことはないだろう。将来的にはタクシードライバーになるはずだった人の雇用が少なくなるかもしれないが、人手が足りない業種は多い。タクシーが少ない人手で回せれば他の産業にとって少しはプラスになる可能性もある」(川鍋氏)
GOとウェイモ、日本交通が戦略的パートナーシップを締結するに至ったきっかけは、2023年8月の出来事だという。「米国で運行するウェイモのサービスを試すためにアリゾナ州フェニックスに向かった。ショッピングセンターでアプリを使って呼び出してみると、本当に運転席が無人のクルマがやってきて、透明人間が運転しているかのように動き出した。3回乗って、タクシーのプロとしてあら探ししたが、短所は見つからなかった。少子高齢化や労働者不足が進む日本で、移動手段の確保に貢献すると確信した」(川鍋氏)
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