キッコーマンが需給調整自動化システムの運用開始、物流負荷を軽減し在庫適正化:製造IT導入事例
キッコーマン食品は、時系列モデルを活用して出荷量を予測し、自動で生産計画を立案する需給調整システム「Naries」を導入。人手に依存していた業務を自動化することで、物流負荷の軽減と在庫の最適化、業務の標準化を実現する。
キッコーマン食品は2025年4月7日、需給調整の自動化により在庫の適正化を図る新システム「Naries(ナリエス)」の運用を、同年4月から開始したと発表した。同システムはMt.SQUAREの支援を受けて開発されたもので、出荷予測から生産計画立案、需給の変動に応じた自動修正までを一貫して行う。
「Naries」は、特定の商品を対象に、過去の出荷実績を基に時系列モデルを活用して将来の出荷量を自動予測する機能を備える。予測された出荷量に基づき、適切な在庫量を維持するための生産計画を自動的に立案。さらに、立案した計画と実際の出荷との間に乖離(かいり)が生じた場合は、システムが日次で差異を監視し、将来的な欠品や過剰在庫のリスクを検知してアラートを出すことで、計画の見直しを促す。これにより、需給のズレを早期に是正できるほか、在庫の最適水準を維持することが可能となる。
従来、需給調整業務や在庫監視は主に人手によって行われており、作業者の経験やスキルに依存する側面が大きかった。「Naries」はこの業務を自動化することで、業務負荷の軽減に加え、属人化やヒューマンエラーのリスクを低減。より高度で安定した需給調整が実現できる仕組みとなっている。
物流業界では、ドライバー不足や物流費の高騰といった課題に加え、2024年問題への対応が急務となっている。こうした背景を受け、キッコーマン食品では2024年1月に「Naries」のシステム構築プロジェクトを立ち上げ、2025年1月からテスト運用を開始。実運用に耐え得る精度を確認できたことから、今回の本格導入に至った。
同社は、バリューチェーン全体で社会課題の解決を目指す姿勢を掲げており、「Naries」の導入もその一環として位置付ける。今後も、持続可能な物流体制の実現と、事業の収益性向上の両立に向けた取り組みを継続する方針だ。
(※)本記事は制作段階で生成系AIを利用していますが文責は編集部に帰属します(ITmedia AI倫理ポリシー)
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