コロナ禍をはじめとする社会環境の変動により、企業のサプライチェーンにはこれまでの効率性に替わってレジリエンスが求められるようになっている。このサプライチェーンレジリエンスの解説を目的とする本連載の第2回では、サプライチェーン課題に対応する上で重要となる「BOM(材料表/部品表)」について紹介する。
前回は、現在の社会環境変化がもたらしたサプライチェーン上の課題が何で、それにどう取り組むかについて述べました。今回は、製品開発分野の活動で、このような課題に対応できる方法についてご紹介します。
⇒連載「サプライチェーンレジリエンスに向けて」バックナンバー
製品に欠かせない重要な部品を一般的にキーパーツと呼びます。キーパーツをサプライチェーン上で必ず調達することが大切ですが、その際に課題になるのはこのようなキーパーツがどの製品にどれだけ使用されているかが判断しにくいことです。
また、部品自体の重要性の他に、納期に時間がかかる部品やモジュールが存在します。納期を判断するための情報は社会情勢によって時々刻々と変化するため、部品やモジュールについての納期情報は静的ではなく動的に捉える必要があります。
加えて、キーパーツが供給困難な場合、代替部品を使えるか、その供給可能性は現時点どうなっているか、という点について、常時検討しておくことが必要です。
これらの課題を解くためには、製品開発分野を中心に、企業全体のコアな業務データとして「BOM(材料表/部品表)」を正しく整備しなくてはなりません。企業内でもBOMは主管部門ごとに定義、活用されているのが一般的です。ここからは、サプライチェーン課題に対応する上で重要となるBOMについて紹介します。
多くの製造業において、同じ製品ラインアップでもさまざまなオプションがあり、さらに投入する市場ごとに仕向け地違いのバリエーションが存在します。製品マスタBOMは製品の全バリエーションを含む、いわゆる「150%BOM」として管理されます。また、製品バリエーションの仕様とユニットの対応を管理しているため、特定の仕様の設計用BOM(E-BOM)を抽出することが可能です(図1)
製品マスタBOMでは該当する製品の全バリエーションを管理していますが、その中から特定の製品のために仕様を抽出したものが設計BOM(英文ではEngineering BOM、通常E-BOMと称されます)です。これは、設計や技術情報、必要な部品の数量などの決定に用いられます。図2は、量産型製造業のE-BOMのイメージです。
このように部品が製品構成の中で定義されていれば、対象の部品が(特に共用部品であれば)どの製品で使われているかの判別が容易になります。このことを「BOMの逆展開」と呼び、部品供給と完成品の生産の関係性を分析する上で非常に重要な機能です。
受注型製造業においては、製品マスタBOMで管理している製品は標準機のユニットや部品であるため、そこから仕様を抽出し、受注仕様に合わせてカスタマイズした製品構成をE-BOMとして定義します。作成したE-BOMは受注番号とひも付けて管理することで、顧客ごとへの見積もりや、納期回答のプロセスとの連携が可能になります(図3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.