「成長する企業」と「現状維持の企業」 今すぐにでも変えられるそのポイントとはこれからの中小製造業DXの話をしよう(2)(2/2 ページ)

» 2025年03月18日 07時00分 公開
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(3)ベクトルを変えるために必要なもの

 今までは発注元が求める技術を強化することで発注が増え、企業として成長できたため多くの中小製造業の経営者が「技術者経営者」という位置付けで、技術者としての側面がより重要視されていました。

 しかし、デジタル化が進展する現代においては、技術力だけでは差別化しづらくなってきています。経営者は、自らがデジタル化の目的を理解し社内へ組み込む、会社を変革するリーダーシップを発揮する必要があります。つまり、「技術者経営者」へシフトチェンジする時代になったと言えます。技術も分かる経営者としての位置付けをより強くしなければならないということです。

 今を生きる経営者は経営、事業、デジタルの知識を生かし、企業の成長を意識していくことが非常に重要です。具体例を挙げると、最新のITツールやデータ活用の知識を習得し、組織内での情報共有体制を整備することや、外部の成功事例を学び、若手経営者や現場のリーダーと共に意見を交換するなど、組織全体が変革に向かって連動する仕組みづくりが必要になります。こうした取り組みが、企業のベクトルを根本から変える原動力となってきます。

photo 経営者に求められる思考の変化 出所:筆者が作成

(4)デジタル化進展度合で生じる格差

 中小製造業でもデジタル化に積極的に取り組んでいる企業もあれば、アナログでほとんどのことに対応している企業もいます。そして、その背景はデジタル化ツールが優れていたり、技術的な問題にあったりするのではなく、その企業に根付く考え方や、経営者の働き方によるところの方が大きいということです。

 最大のポイントは、経営者のデジタル化に対する考え方です。これにより積極性や実施内容に明確な差が発生しています。デジタル化を進めた企業は、業務の効率化や情報共有の迅速化に成功し、経営判断のスピードが向上しています。

 例えば、売上高や需要見込みを立てる際に、デジタル化が進んでいる企業ではボタン1つでグラフとして表示しすぐに対策の議論に入ることができますが、経理システムのデジタル化などが進んでいないとまずは手書きの書類から正しい情報を選んで集めるだけで膨大な時間が必要になります。さらにその情報を集めている間に状況はどんどん変わっていってしまい、精度に問題が出てくるため、決定的な判断を下すことが難しい状況が生まれます。

 これは、大げさな例ではなく、実際に筆者が目の当たりにした事実です。経営者の意識や組織文化に深く根差すデジタル化の進展度合いが、ここまで経営のスピードに影響していることに私自身も驚く事例でした。

 今回のコラムでは、デジタル化の推進には経営者の意識改革がいかに重要であるかを記載しました。今後、日本の中小製造業が持続的な成長を遂げるためには、先進的な経営戦略とモノづくり技術そしてデジタル技術の融合が不可欠と言えます。変革の波に乗り、経営者自らがリーダーシップを発揮することで、企業の活性化へとつながると考えることができます。

 次回以降は、実際にデジタル化を進めた企業の具体的な事例を紹介し、成功のポイントを探ります。デジタル化を検討している企業にとって、より実践的な知見を提供していく予定です。ご期待ください。

⇒連載「これからの中小製造業DXの話をしよう」のバックナンバーはこちら

辻村裕寛(つじむらやすひろ)
ネクサライズコンサルティング 代表取締役
兼 産業能率大学 総合研究所兼任講師

【資格】

経済産業大臣認定 中小企業診断士
PMI認定PMP
認定経営革新等支援機関

ITベンチャー、リコーテクノシステムズ、日立コンサルティングなどのIT/コンサル業界での経験を経て、2024年4月に独立しました。「企業と働く人へのコンサルティングを通じて、持続可能な変革を促し、新たな価値を創出する。そして、日本経済を持続的な成長が可能な形に変えていく」というビジョンを胸に、日々活動しています。

コンサルティングサービスによる企業支援と並行して、コンサルティング現場から得られた示唆、時代に求められることをLive感あるコラムで発信中。並行して、組織・従業員への研修/セミナーにより内部から成長を促進する企業への変革をお手伝いしております。こうした活動を通して、現在、そして、これからの人たちが働きやすく・過ごしやすい社会の構築を目指しています。
従業員へのセミナーでは現役世代だけではなく、50代半ばからの出口戦略をともに考え作り上げるサービスを提供することで、高齢化社会だからできる社会構築のお手伝いをしております。これらを通じて、日本のGDP改善の実現に貢献してまいります。

著書として、今回連載するコラムのもとになったプロジェクトの詳細を記載した『中小企業のまち大田区からはじまる ものづくり日本再興プロジェクト』(ダイヤモンド社)がございます。

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