中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、同白書の内容を4回に分けて紹介する。第2回は、「デジタル化」と「グローバル化」を切り口とし、中小製造業の自己変革の必要性について取り上げる。
経済産業省 中小企業庁は2019年4月に「2019年版 中小企業白書」(以下、中小企業白書2019)を公表した。本連載では中小企業白書2019を元に、中小製造業を含めた中小企業における人手不足や、そのような状況下で労働生産性を向上させるための「デジタル化」「グローバル化」といった中小企業に求められる新たな取り組み、また中小企業における世代交代の実態などについて4回に分けて考察する。
第1回「深刻化する中小製造業の人手不足」では、中小企業の人手不足の現状を明らかにするとともに、現状の雇用の在り方について掘り下げた。第2回では、新たな販路拡大の可能性と経営の合理化を後押しする「デジタル化」、新興国を中心とした海外の需要を獲得して成長の機会を得る「グローバル化」という、中小企業に求められる自己変革について掘り下げたい。
第1回では、日本経済の緩やかな回復基調を背景に雇用環境は改善しているものの、大卒予定者や転職者の大企業志向の高まりなどにより、中小企業における人手不足が深刻化している状況を確認した。加えて、将来的に人口減少が加速することが見込まれる中、日本経済のさらなる経済成長のためには、全企業のうち99.7%を占める中小企業が労働生産性を高めることが重要であることを紹介した。そこで、中小企業に求められる自己変革について話を進める前に、まず中小企業の労働生産性の現状を明らかにしたい。
最初に大企業との比較をしつつ、中小企業の労働生産性の現状について概観する(図1)。大企業について見ると、リーマンショック後に一度落ち込んでいるものの、その後は一貫して緩やかな上昇傾向にある。一方で中小企業については、大きな落ち込みはないものの製造業、非製造業ともに長らく横ばい傾向が続いており、大企業との差が徐々に拡大していることが分かる。
中小企業の労働生産性について業種別に見ても、建設業や卸売業では緩やかな上昇傾向にあるのに対し、製造業、小売業、サービス業では横ばいに推移していることが分かる(図2)。
次に、2016年から2017年にかけての労働生産性上昇率の内訳について、業種別、規模別に確認したい(図3)。まず製造業について見てみると、従業者を増やしたことによる従業者要因の下げ幅は大企業と中小企業との間で差は生じていない。しかし、付加価値額を伸ばしたことによる付加価値要因についてはおよそ3倍の差が生じている。中小非製造業は付加価値要因も従業者要因も大企業の約半分の水準ではあるものの、付加価値要因が従業者要因を上回り、総じて見ると労働生産性はわずかに上昇していることが分かる。
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