ダロズ氏の後、再びバッシ氏がステージに登場。ダッソー・システムズは、自然から得られるインスピレーションを“次のレベル”へ引き上げるとし、「そのためには3Dモデルだけでは不十分でコンテキストが必要だ。また、物事が環境とどのように相互作用するかを正しく理解しなければならない。そのために、ダッソー・システムズはあらゆるもののバーチャルツインの構築を支援する」(バッシ氏)という。
その一例として紹介した「Living Heart Project」では、自分自身の心臓のバーチャルツインを用いながら医師とともに没入型体験を通じてコミュニケーションを図り、術式を確認したり、治療方針の検討に役立てたりすることが可能になる。
また、産業分野においても、レジリエンス/サステナビリティ/人間中心のコンセプトが盛り込まれた「インダストリー5.0」は経験経済と循環経済が融合した生成経済の概念に共通するものであり、自然の自己再生能力からインスピレーションを得た事例として、英国ケンブリッジ大学による自己修復材料の研究などについて触れた。
インダストリー5.0の世界における製品開発では、設計段階で製品ライフサイクルの終了時のことを考え、再利用とリサイクルの方向性について、あらかじめ設計に盛り込んでおくことが重要となる。このような考えに基づき、SOLIDWORKSは持続可能性をサポートするという。
さらに、未来の方向性としてあらためてAIについて触れ、先ほどダロズ氏が紹介したVirtual Companionsによって、CNCや3Dプリンタなどのデジタル製造のためのパスを簡単に最適化するアプローチや、環境規制をクリアできているかを判定し支援するアプローチなどを紹介した。必要な全ての知識が備わったVirtual Companionsを活用することで、未来に向けた設計/製造が可能となる。
「このようなSOLIDWORKSがかなえる輝かしい未来は、ユーザーやコミュニティーと一緒にこれから先も歩んでいけることを意味する。SOLIDWORKSの今の姿があるのは皆さんのおかげであり、将来のSOLIDWORKSもまた皆さんの力で形作られていくことだろう」(バッシ氏)
続いて、ダッソー・システムズ SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当バイスプレジデントのマニッシュ・クマー氏が登場。30周年を迎えたSOLIDWORKSの進化の歴史に触れ、あらためてユーザー/コミュニティーに対して感謝を述べた。そして、これまでの講演内容を踏まえ、その先のSOLIDWORKSの進化/拡張の方向性について紹介した。
まず、架空の会社を例に、プロダクトマネジャー、設計者、技術営業、顧客の視点で、3DEXPERIENCEプラットフォームによるデータ中心の実現、AIを活用したプロトタイプの生成、バーチャルツインを用いたシミュレーションによる迅速な意思決定、バーチャルリアリティーによる没入型レビューの実現、AI駆動による自動化/最適化、バーチャルツインを活用した予知保全など、SOLIDWORKSブランドと関連ソリューションの活用による新しい時代の製造業の在り方について示した。
「これが第7世代として紹介した3D UNIV+RSESで実現されるビジョンの一端だ。ダッソー・システムズは知的財産を保護し、知識とノウハウを引き出し、Virtual Companionsを活用して生産性を向上させる方法を提供する」(クマー氏)
さらに、クマー氏は“New Era”として、今後SOLIDWORKSは設計や解析、製造の枠を超えて、ビジネスの成長に役立つプラットフォームとして進化するとアピール。その関連として、2つの新たな発表を行った。
1つ目は、3DEXPERIENCEプラットフォーム上に組み込まれたVirtual Companionsの1つとして「AURA(オーラ)」の提供を開始する。AURAはどこからでも、どのデバイスからでもプラットフォームを通じて利用可能で、「3DSwym」に組み込まれる形でChatGPTのように利用者からの質問に対して、質の高いアウトプットやそのソース(情報元)を返すことができる。
学習内容やインプット/アウトプットなど、企業のIPに関わるあらゆる情報のやりとりについては、全てプラットフォーム上で安全に管理されるという。「われわれは、ユーザーのIPを守ることが最優先事項だと考えている。AURAは現在β版で、2025年7月に全てのプラットフォームユーザーにリリースされる予定だ。私の大好きな機能なので、きっと皆さんも気に入ってくれるはずだ」とクマー氏は説明する。
2つ目が、2025年にリリースを予定している製品構成、価格設定、見積もりソリューション「SOLIDWORKS CPQ(CONFIGURE、PRICE、QUOTE)」だ。「これは、例えば製品マネジャーが初期要件を完了するところから、設計者が製品をカスタマイズ可能に設計し、セールスエンジニアが正確なユーザー要件や構成を作成して顧客向けに製品の最終見積もりを生成するまでを支援する。その結果、より多くのビジネスを獲得できるようになる。これらの機能は全て3DEXPERIENCEプラットフォームでカバーされる」(クマー氏)。
以上、初日のゼネラルセッションの注目内容を中心にお届けした。
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