Boston Dynamicsの創業者であるマーク・レイバート氏が、ダッソー・システムズ主催の「3DEXPERIENCE World 2025」の基調講演に登壇。自身が歩んできたロボット開発における探究の道のりや、ロボットづくりの本質について語った。
「ソフトウェアが世界を飲み込む」――。Webブラウザの「Netscape Navigator」の開発者であり、現在はVC(ベンチャーキャピタル)を営むMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏が2011年に放った言葉だ。
あれから14年、アンドリーセン氏の言葉通り、多くの投資マネーがソフトウェアやサービスに流れているが、Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)を創業したMarc Raibert(マーク・レイバート)氏はそのような時流に流されることなく、ロボットというモノづくりにこだわり続けてきた。
ダッソー・システムズが米国テキサス州ヒューストンで開催した年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2025」(会期:2025年2月23~26日/会場:ジョージ R.ブラウン コンベンションセンター)の基調講演に、ゲストスピーカーとして登壇したレイバート氏は「物理的なモノを作ることの重要性が失われている」と述べ、自身のロボットへの探究を振り返った。
Boston Dynamicsを1992年に創業したレイバート氏だが、“ロボットとの出会い”はそこから20年近く前にさかのぼる。1974年に出席したある会議で、ロボットの展示を見たときのことだ。
このとき、レイバート氏はロボットを見て興奮を覚えるとともに、運動エネルギーを持たず静的にゆっくりと動く様子に「違う」と感じたという。そして、「人間や動物は動きのダイナミクス(動力学)を利用している。これを何らかの形でロボットに取り入れたい」(レイバート氏)との衝動に駆られ、その思いが後のBoston Dynamics創業につながることとなる。
Boston Dynamicsは、2005年に披露した四足歩行の「BigDog」を皮切りに、複数のロボットを開発している。3DEXPERIENCE World 2025では「Spot」がステージに登場し、イベントの盛り上げに一役買った。Spotは犬のように動く四足歩行ロボットで、福島第一原子力発電所の調査での活躍も知られるところだが、レイバート氏はこのSpotについて「実験的に作られた」と明かす。
Spotは全方向性で回転もお手のもので、横向きのカニ歩きも難なくこなせる。両側面、背面と前面にカメラを搭載し、障害物を避けることができる。プラットフォームとして、サードパーティー製の機器を背中部分に搭載することも可能だ。コンピュータとの接続にも対応し、API(Application Programming Interface)を介して指示も出せる。
そのSpotを商用化すると決めたとき、「どのように使用されるか分からなかった」とレイバート氏が言うように、用途はユーザー自身が見いだしていった。周囲を見ながら動きをコントロールできるという特性を生かし、製造現場での検査業務の他にも、大学の研究開発や警察、そして福島、チェルノブイリ、スリーマイル島をはじめとする原発事故現場での調査などで採用されている。現在、2000台のSpotが世界各地で活躍しており、「絶好調だ」(レイバート氏)という。
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