AIのパワーを誰でも最大限に引き出せる「SOLIDWORKS」で限界なき成長へ3DEXPERIENCE World 2025(2/3 ページ)

» 2025年02月26日 05時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

生成経済に向けてダッソーのイノベーションが“第7世代”へ

 ダロズ氏は、ベルナール・シャーレス氏からダッソー・システムズ CEOのバトンを受け取った直後の「3DEXPERIENCE World 2024」を諸事情により欠席した経緯もあり、CEOとして3DEXPERIENCE Worldのステージに立つのは今回の3DEXPERIENCE World 2025が初めてとなる。

ダッソー・システムズ CEOのパスカル・ダロズ氏 ダッソー・システムズ CEOのパスカル・ダロズ氏[クリックで拡大]

 略歴などを述べた後、ダロズ氏は、同社が“2040年までに目指すビジョン”として掲げる生成経済(ジェネレーティブエコノミー)について触れ、「生成経済の時代においては、自然からインスピレーションを得て、よりスマートに設計し、無駄を減らすことが重要となる」(ダロズ氏)との考えを展開。そして、こうした来たるべき時代では、あらゆるもののバーチャルツイン(Virtual Twin)化によって、ビジネスを変革する機会が創出できるようになること、製品開発を取り巻く知識やノウハウによって生み出されるデータが生成経済の世界における通貨的価値を生むことを説明する。

 こうした方向性を踏まえ、ダッソー・システムズでは知的財産(IP:Intellectual Property)を管理/保護し、その価値を高めるための取り組みに注力している。それが2025年2月に発表したIPライフサイクル管理機能「POWER’by」の中核に、複数の生成AI(人工知能)を組み込んだ新サービス「3D UNIV+RSES(3Dユニバース)」だ。ダロズ氏は「モデリング、シミュレーション、データサイエンス、AI支援コンテンツといった、われわれが長年培ってきたものを組み合わせ、3D UNIV+RSESと命名した」とし、新しい生成経済の時代ではあらゆる活動の中心にAIが据えられるという。

 なお、真ん中の文字が「E」ではなく「+」としているのは、その両側の「V」がバーチャル、「R」がリアルを意味し、バーチャルツイン(V)がより良い現実世界(R)の実現に役立てられ、経験経済(エクスペリエンスエコノミー)と循環経済(サーキュラーエコノミー)が融合した先にある生成経済の時代において、3D UNIV+RSESが重要な役割を果たすと考えているためだ。

IPライフサイクル管理機能「POWER’by」の中核に、複数の生成AIを組み込んだ新サービス「3D UNIV+RSES」 IPライフサイクル管理機能「POWER’by」の中核に、複数の生成AIを組み込んだ新サービス「3D UNIV+RSES」[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ

 ちなみに、3D UNIV+RSESは、同社が世に送り出してきたイノベーションの“第7世代”に位置付けられている。第1世代が「3D」、第2世代が「DMU(デジタルモックアップ)」、第3世代が「PDM(製品データ管理)」、第4世代が「PLM(製品ライフサイクル管理)」、第5世代が「バーチャルツイン」、第6世代が「バーチャルツイン オブ ヒューマン」となる。

ダッソー・システムズのイノベーションに関する変遷 ダッソー・システムズのイノベーションに関する変遷[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ

 ダロズ氏は「AIの魔法を一般化する」とし、ダッソー・システムズのことを産業向けAIのリーダーと強調した上で、高度な技術を誰もが使えることを目指すという。AIによって反復的なタスクを自動化して浮いた時間をイノベーション創出に割り当てたり、AIによる設計提案を活用して意思決定のスピードを上げたりなど、AIの活用をワークフロー変革のコアとして捉えつつ、アイデアや作業内容をはじめとするIPの保護にもAIを役立てる考えを示す。

 そして、「AIを活用したフローは共通のプラットフォームによって高められる」(ダロズ氏)とし、AIの力を最大限に活用するための新たな提供価値として、「Generative Experiences」(GenXp/生成体験)と、「Virtual Companions」(仮想空間のアシスタント機能)を紹介した。GenXpとは組み立て要件、設計、テスト検証などをAI駆動で自動化するもので、設計プロセスの最適化、製造プロセスのシミュレーション、リアルタイムの品質管理などに活用できるという。一方のVirtual Companionsは、作業者のスキルを高め、ワークフローの加速を支援するAIアシスタントだ。

AIの力を最大限に活用するための新たな提供価値として「Generative Experiences」と「Virtual Companions」を紹介 AIの力を最大限に活用するための新たな提供価値として「Generative Experiences」と「Virtual Companions」を紹介[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ
プラットフォームに組み込まれて利用できる「Virtual Companions」のイメージ プラットフォームに組み込まれて利用できる「Virtual Companions」のイメージ。画面右側のエリアで対話しながら作業をアシストしてくれる[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ

 ダロズ氏は、今後ダッソー・システムズとして、企業規模問わずIP保護に努めること、3D UNIV+RSESを打ち出し、データ中心/コンテンツ中心となること、AIを活用しやすくSOLIDWORKSによる体験を拡張すること、それを同じ原則と規律に基づいて提供することなどを強調し、自身の講演を締めくくった。

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