「鹿島のスピーカー」に大注目 中小の価格転嫁問題にも注目集まった2024年製造マネジメント 年間ランキング2024(2/2 ページ)

» 2024年12月25日 07時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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サプライヤーとの価格交渉にも注目集まる

 2位は「『価格転嫁に応じない』企業として、ダイハツ工業、京セラなど10社の社名公開」です。公正取引委員会が2024年3月に、取引先企業に対して取引価格の据え置きをする行為などが認められた企業10社の企業名を公開しました。

 いわゆる「買いたたき」や「下請けいじめ」と呼ばれる行為に対して、公的機関から厳しい目が注がれるようになっています。背景には、物価高が製造業全体の共通課題として強く認識される中で、部材や原材料の高騰分をいかに製品に価格転嫁できるかが中小企業にとって経営上の喫緊の課題となっていることなどがあります。

 中小企業においては従業員への賃上げも大きな課題です。大企業と中小企業では正社員の賃上げ率にいまだ格差が見られることを指摘する報道もあります。物価高を前提に、経営の健全性を確保しつつ従業員の生活を守るための適正な賃上げをしていく上で、大企業との取引における価格転嫁推進はとても重要だといえます。

 一方で、中小企業にとって価格交渉を行いやすい企業を認め、公表する取り組みも行われています。経済産業省 中小企業庁は2024年8月に、中小企業からのアンケート調査や「下請けGメン」らのヒアリングに基づく調査結果を発表しました。その中で、いすゞ自動車や小松製作所など13社が「価格交渉」と「価格転嫁」の両方で最高評価を受けました。

 2024年7月に開催された有識者会議「企業取引研究会」のレポートでは、公正取引員会による社名公表など「従来にない」(公正取引委員会のWebサイトより)厳しい取り組みによって、以前より価格交渉や価格転嫁が進んでいる様子が見受けられるとしています。ただし、Tier2以降のサプライヤーでの価格転嫁が進んでいないことを指摘するなど、今後解決すべき課題も示しています。

 直近では2024年12月17日に、公正取引委員会と中小企業庁が下請法の改正案を公表しました。両組織は今後もこの価格転嫁問題に対して、解決に向けて強い姿勢を継続していくものと考えられます。

再編進む複合機業界

 3位は「新会社名は『ETRIA』 リコーと東芝テックの複合機開発/生産事業統合へ」でした。2023年5月に報じられたニュースの続報で、再編が加速するとみられる事務機器業界の注目動向として多くの読者に読まれました。

 将来的な市場規模の縮小が予測される中、複合機メーカー各社は事業のコストスリム化に向けた取り組みを加速させています。ETRIAの取り組みもこうした動きにのっとったものです。2023年5月の発表当初、両社は取り組みのねらいを複合機の基盤となる共通エンジンの開発や生産などと説明していました。

 同様にコニカミノルタと富士フイルムビジネスイノベーションが原材料や部材調達で連携する合弁会社の設立を発表しました。ただし、2024年9月に「海外における競争法上の審査/承認手続きが継続しており、設立予定日を変更する」(ニュースリリースより)としており、現時点で設立日は未定となっています。

 これに加えて複合機メーカーには、全社的な事業構造改革、つまり新しい稼ぎ頭をどう作っていくかという課題があります。バイオ事業やDX事業など、各社が投資を拡大させていますが、それらの成果がどのように出るか、今後注目です。


 4位以下の記事では品質不正関連の記事が目立ちますが、それ以外にもジョンソンコントロールズ日立空調の全株式がボッシュに譲渡されることを報じた記事や、ガートナーのハイプサイクルの紹介記事など、例年より多岐にわたるジャンルの記事が読まれた印象です。

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