進化する「ゲームのボタン」 ユーザーの思いをくむ老舗パーツメーカーの開発舞台裏ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(15)(5/5 ページ)

» 2024年07月10日 07時00分 公開
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三和電子が見る、ゲームボタンの「未来」

――では最後になりますが、三和電子が「目指すボタン」とは、どのようなものでしょうか?

斉藤さん 使っていて気持ち良いとか、こんなデザイン他にないよねとか、楽しそうな雰囲気が伝わってくるようなボタンが良いですね。当社のボタンはキッズゲームにもよく使われているのですが、子どもたちがボタンを押して、楽しそうにしてくれていたらうれしいなと思っています。

  ボタンやレバーはスイッチをオン/オフするためのものですが、それだけではなく「楽しさ」や「爽快感」など、プラスアルファの感動が得られる製品を目指していきたいですね。

 また、最近はタッチパネルや空間認識などを使ったボタンも多くありますが、当社は押しボタンが持つアナログ的な強みを生かした製品開発を忘れずにいたいです。やはりアナログの良さってあると思うんです。レコードに針を乗せる作業に味があるというような(笑)。

――分かります。「ボタンを押した感触」は、それぞれ個性的ですよね。

斉藤さん そうなんです。アナログ製品からしか得られない、感覚的なものを大事にしていきたいですね。

三和電子では、「楽しさ」や「爽快感」など、プラスアルファの感動が得られる製品を目指して開発を進めていく 三和電子では、「楽しさ」や「爽快感」など、プラスアルファの感動が得られる製品を目指して開発を進めていく 出所:ものづくり新聞

三和電子のWebサイトと公式X


編集後記

 なぜ、人はボタンを押したくなるのか。この企画が決まって以来、私はずっと考えていました。

 ボタンの押し心地が気になる、ダメといわれると余計に押したくなる、というものから、単調な作業の繰り返しが精神の安定につながる、一定のリズムで音を出す事がストレス解消になるなどという、タメになるお話まで聞こえてきました。どれも、なるほどとうなずけるものばかりです。

 ボタンは、「スイッチ」だと思うのです。押したらきっと、何かが起きる。ボタンを押す瞬間って、まだ見ぬ未来にワクワクしているのだと思いませんか? だから、好奇心はいつも、目の前のボタンを押したくなるのではないかなと、そんな風に思っています。

 私はきっとこれからもボタンを見つけるたびに押したくなるし、ボタンを押した後の世界の変化に思いをはせることも止められないと思うのです。少し大げさでしょうか(笑)。

 さて、今回は、世の中に数あるボタンの中から三和電子さんのゲームボタンについてお届けしました。ゲーム歴40年の筆者から見て、三和電子さんのボタンはとにかく「押し心地」が抜群です。反応速度、指へのフィードバック、打鍵音……あらゆる角度から計算されたボタンのメカニズムは、爽快なプレーフィールに大きな影響を与えています。

 「押すだけで気持ち良いボタン」、そう聞くだけで、なんだか押したくなりませんか。

 今、読者の皆さんが想像したボタンが、まだ見ぬワクワクへのスイッチだとしたら。それは書き手としても、喜ばしい限りです。

(ものづくり新聞/木戸一幸)

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著者紹介

ものづくり新聞
Webサイト:https://www.makingthingsnews.com/
note:https://monojirei.publica-inc.com/

「あらゆる人がものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」をビジョンに、ものづくりの現場とつながり、それぞれの人の想いを世界に発信することで共感し新たな価値を生み出すきっかけをつくりだすWebメディアです。

2023年現在、160本以上のインタビュー記事を発信し、町工場の製品開発ストーリー、産業観光イベントレポート、ものづくり女子特集、ものづくりと日本の歴史コラムといった独自の切り口の記事を発表しています。

編集長

伊藤宗寿
製造業向けコンサルティング(DX改革、IT化、PLM/PDM導入支援、経営支援)のかたわら、日本と世界の製造業を盛り上げるためにものづくり新聞を立ち上げた。クラフトビール好き。

記者

中野涼奈
新卒で金型メーカーに入社し、金属部品の磨き工程と測定工程を担当。2020年からものづくり新聞記者として活動。

佐藤日向子
スウェーデンの大学で学士課程を修了。輸入貿易会社、ブランディングコンサルティング会社、日本菓子販売の米国ベンチャーなどを経て、2023年からものづくり新聞にジョイン。

木戸一幸
フリーライターとして25年活動。150冊以上の書籍に携わる。2022年よりものづくり新聞の記事校正を担当。専門分野はゲームであるが、かつては劇団の脚本を担当するなど、ジャンルにとらわれない書き手を目指している。



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