図10に片持ちはり内部に発生する応力分布を示します。z軸を傾けて描いていますが、微小変形問題なのでz軸はほぼ垂直です。
z軸上の応力とひずみは次式で表されます。M(x)は曲げモーメントです。
式56を使って、はり全体に蓄えられるひずみエネルギーを求めましょう。
はり理論の次式を上式に代入します。
ここで矩形(くけい)断面の断面二次モーメントの式を使いました。式52を再掲し、式62とします。
速度がゼロのとき、変形量は最大になるはずなので、次式が成立するとき、変形量は最大です。
式50をxで2回微分しましょう。
はり全体に蓄えられるひずみエネルギーは、式64を式61に代入して次式となります。
式63が成立するとき、速度がゼロです。速度がゼロのときのはり全体に蓄えられるひずみエネルギーは次式となります。
式51に従って、式55と式66が等しいと置きましょう。
式67は、変形時の形がコサインカーブだと仮定して導いた式です。どれくらいの精度があるかを調べましょう。図11は、300[mm]スケールをブルブルブルっと振るわせたときの固有振動数です。16.8[Hz]ですね。
式67による計算結果と実験値との比較を表1に示します。実験値との違いは7.5[%]でした。この問題は厳密解があって固有振動数は17.4[Hz]です。式67による計算結果と厳密解との差は3.7[%]で、微分方程式を解かずに連続体の振動の固有振動数を数パーセントの誤差で予測できました。「恐るべし、レーレー法」ですね。
実験値が低めになったのは、スケールを固定している机が木製なので全体の剛性が低くなったためだと考えられます。
片持ちはり問題のまとめです。式55を変形します。
式66を変形します。
式68と式69から、片持ちはりの固有角振動数は次式となります(参考文献[5])。
断面二次モーメントと断面積を積分の中に移動して座標xの関数としました。式70から、断面が変化する片持ちはりでも、積分を数値積分などすれば固有角振動数は容易に求めることができます。
レーレー法による片持ちはりの固有振動数を解くことと有限要素法の比較を表2に示します。両者はよく似ているので、「実は有限要素法はレーレー法を使っているのだよ」といってもよいと思います。
次回は、剛性マトリクスを導出します。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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