デジタルツインを実現するCAEの真価

有限要素法入門 〜連立方程式の解法、変位の計算〜CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(3)(5/7 ページ)

» 2024年04月15日 09時00分 公開

応力−ひずみマトリクス[D]

 応力−ひずみマトリクス[D]を求めましょう。応力−ひずみマトリクスは、ひずみベクトルを応力ベクトルに変換する行列です。次式で表されます。応力−ひずみマトリクス[D]は3行3列の行列となります。

式38 式38

 ポアソン比の定義を思い出しましょう。2次元平面応力問題として説明します。図6の通り、小さな四角形に対してx方向にσxの応力が作用しているとします。x方向にはδxだけ伸びて、y方向は応力が作用していませんがδyだけ縮みます。Ly+δyと表記したのでδyはマイナス値です。

小さな四角形の変形:2次元平面応力状態 図6 小さな四角形の変形:2次元平面応力状態[クリックで拡大]

 ひずみは次式で定義されています。

式39 式39

 体積保存則が成立していたらδyは自動的に決まりますが、金属などの弾性体は少し体積が増えます。δyは実験で求める必要があります。体積が増える度合いはポアソン比で表現できて、ポアソン比νは次式で定義されます。体積保存則が成立していたらν=0.5[-]となります。

式40 式40

 σxとεxの関係はヤング率の定義から次式ですね。

式41 式41

 ポアソン比を使うと、y方向ひずみは次式で表されます。

式42 式42

 y方向にσyの応力が作用したときのx方向ひずみは上式と同様の考え方で次式となります。

式43 式43

 x方向とy方向に同時に応力が作用したときのx方向ひずみは、式41式43の和なので次式で表されます。

式44 式44

 y方向ひずみは同様の考え方で次式となります。

式45 式45

 せん断ひずみとせん断応力の関係は、せん断弾性係数Gの定義から次式となります。せん断弾性係数Gは、ポアソン比を使うとヤング率で表されることも考慮します。

式46 式46

 式44式45式47を合体しマトリクス表示しましょう。

式47 式47

 式47の逆行列を求めればよいのですが、それよりも式44式45の連立方程式を解いた方が楽ですね。応力ベクトルは次式で求まります。

式48 式48

 応力−ひずみマトリクス[D]は次式となります。

式49 式49

 式の数が50個近くにもなってしまいましたね。キリが良いので今回はこの辺にしますが、少し寄り道をしましょう

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