日産が新たな中計を発表、2026年度までに新型車30車種電動化(2/2 ページ)

» 2024年03月26日 10時45分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 欧州や南米、ASEAN、インドではルノーや三菱自動車とのアライアンスを引き続き活用する。欧州ではアンペアとの協業も強化し、コンパクトEVやSDV(ソフトウェアデファインドビークル、ソフトウェア定義車両)を開発する。

 三菱自動車とは、日本のエンジン車や軽EV、オセアニア向けの1トンピックアップトラックやASEAN向けの将来モデル、メキシコでの1トンピックアップトラックの生産、北米でのPHEV投入、EVまたはPHEVを視野に入れた次世代1トンピックアップトラック、バッテリーの共用など幅広く協力する。インドではルノーとともに、CMF A/Bの商品やAセグメントのEV、現地での生産/開発などで協働する。南米ではルノーとAセグメントのEVやピックアップトラックの導入で協力していく。中国では現地の資産をフル活用して、中国などのニーズに応えていく。

 日本と米国では新たなパートナーシップを模索する。ホンダとの戦略的パートナーシップの検討開始がその一例だ。

アライアンスを生かした協力のプロジェクト[クリックで拡大] 出所:日産自動車
新型車のうち、15車種はアライアンスやパートナーとの協力となる[クリックで拡大] 出所:日産自動車

EVの競争力向上

 EVの競争力向上に当たっては、日産独自の複数車種のファミリー開発やパワートレインの一体化、次世代のモジュラー生産、バッテリーの革新などを進め、次世代EVのコストを「アリア」と比べて30%削減する。また、2030年度にはエンジン車と同等のコストを実現する。

 ファミリー開発によるEVは2027年度から生産する。5車種を一括で開発し、モデルごとの差別化を図りながらアッパーボディーを共有する。メインモデルをベースにすることで後続モデルの開発費は50%削減する目標だ。トリム部品のバリエーションを70%削減し、開発期間は4カ月短縮する。次世代モジュラー生産では、車両の生産ラインを短縮して1台当たりの生産時間を20%短縮する。大幅な自動化により、新構造の次世代EVの生産を可能にするとしている。これらの取り組みにより、5車種合計で1500億円の開発費を抑制する。

ファミリー開発でコスト低減を図る[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 これらの取り組みに向けて、サプライヤーとの連携を強化する。車種ごとの取引ではなく、開発の早い段階で参加してもらうなど新たなアプローチをとるとしている。共同での企画や開発によるコストやプロセスの最適化など、サプライヤーにもメリットを提供する。

 生産面での競争力向上に向けて、最新の生産コンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」を国内外の工場に拡大する。2026〜2030年度に追浜工場(神奈川県横須賀市)と日産自動車九州(福岡県苅田町)、英国 サンダーランド工場、米国のキャントン工場とスマーナ工場で導入する。また、EV生産ハブの「EV36Zero」については、米国のキャントン工場やデカード工場、スマーナ工場、日本の栃木工場(栃木県上三川町)、日産九州に2025〜2028年度で採用する。

2026年度に向けて多様な電動パワートレインを展開する[クリックで拡大] 出所:日産自動車

次世代のバッテリーやプロパイロット

 技術面では、高速道路だけでなく一般道や敷地内など最終目的地までドアツードアカバーする次世代「プロパイロット」を2027年度に製品化する。2030年度にはさらに進化させたプロパイロットを投入する。

 EVのバッテリーは、活物質にNCM(三元系)やLFP(リン酸鉄リチウム)を採用したタイプを進化させて展開し、全固体電池も投入する。進化した三元系やリン酸鉄リチウムの電池と全固体電池は2028年度にEVに搭載する計画だ。

 次世代の三元系リチウムイオン電池はアリアと比べて急速充電にかかる時間を50%削減するとともに、エネルギー密度を50%向上させる。次世代のリン酸鉄リチウムイオン電池は国内で開発、生産する。「サクラ」と比べてコストを30%削減し、軽EVに採用する。全固体電池の開発は順調で、2024年度には予定通りパイロット生産ラインを設置するという。

 バッテリーはパートナーとともに開発、調達し、グローバルで135GWhの生産能力を確保する。欧州が25GWh、中国が40GWh、日本が10GWh、米国が60GWhと計画している。AESCやCATL、VEJ、SUNWODAがパートナーとなる。

 2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、サーキュラーエコノミーを推進する。1台当たりのライフサイクル全体でのCO2排出量は、2030年度に2018年比30%削減することを目指す。

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