日産自動車は「ゼロ・エミッションフォーラム2024」を開催した。EVを中心とした脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて語るフォーラムで、日産自動車と協力してカーボンニュートラル実現を目指す自治体や大学が登壇した。
日産自動車は2024年2月2日、東京都内で「ゼロ・エミッションフォーラム2024」を開催した。EV(電気自動車)を中心とした脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて語るフォーラムで、日産自動車と協力してカーボンニュートラル実現を目指す自治体や大学が登壇した。また、衆議院議員の小泉進次郎氏も参加し、EVへの期待などを語った。この記事では当日の講演を抜粋して紹介する。
最初に日産自動車 執行役副社長の星野朝子氏が登場し、能登半島地震の被災地での支援活動や、EV活用を支援する取り組み「ブルー・スイッチ活動」について語った。
日産自動車は2021年に石川県と災害連携協定を締結。石川県内の販売会社と協力して、能登半島地震の発生直後から災害連携協定に基づいてEVやポータブル充電器を届けた。ただ、「通信障害によって被害の大きさや停電の地域などが把握しにくく、当初はどこにEVやポータブル充電器を届けるべきか分からなかった」(星野氏)。
道路の寸断も問題になった。クルマの通信機能を通じて通行実績を把握できたが、道路が開通しても通行できるのは緊急車両に限定されており、EVが向かうことができないという出来事もあった。被災地に向かうEVを緊急車両に指定してもらえるかどうかなど調整が必要になったが、その一方で余震が続いたので、日産自動車や販売会社の社員をどこまで派遣できるか、安全をどう担保するか、販売会社の社員の被災など、さまざまな問題に直面した。
「現地での判断や意思決定も必要であるなど、多く学ばせてもらった。知見は災害連携協定を結んでいる他の自治体にも共有していきたい」と星野氏は能登半島地震での支援活動を振り返った。
ブルー・スイッチ活動は2018年5月にスタートした。2019年9月に千葉県に大規模な停電や被害をもたらした台風が、ブルー・スイッチ活動での災害連携協定が広がるきっかけになったと星野氏は振り返る。千葉県には50台のEV「リーフ」を派遣し、避難所だけでなく老人ホームや保育園などさまざまな場所で活動した。これが災害時にEVが貢献できることを広く知ってもらうきっかけになったという。
2050年までにカーボンニュートラルを目指すという政府目標も、ブルー・スイッチ活動の追い風となった。災害連携だけでなく、SDGsやエネルギーマネジメント、地域の交通の課題解決、サステナブルツーリズムなども含めた包括的な協定に変化していった。これまでに240の自治体とブルー・スイッチ活動で協定を結んだが、現状は点での取り組みだ。「これを面に広げていきたい。使用済みバッテリーを活用したサーキュラーエコノミーなども推進したい」(星野氏)
ただ、EVの普及はまだ道半ばだ。日本の新車販売に占めるEVの比率は2.2%で、先進国の中では低迷している。日産としてのEV販売比率も11%強だ。ゼロエミッション社会の実現に向けて、EVの販売拡大だけでなくさまざまな取り組みが必要だという。
今後はエネルギーマネジメントの重要性が増す。AI(人工知能)やデジタルの活用が進むことで、電力の需要は飛躍的に高まる。10倍、20倍の電力が必要になるという試算も複数あるという。「企業や家庭の節電によってカバーできる規模ではない。石炭や石油を使った火力発電で将来の需要をまかなっていくとCO2削減の目標から後退してしまうため、再生可能エネルギーの活用はますます必要になる」と星野氏は語った。
「再生可能エネルギーの活用を進めるということは、電気をためる必要性が増す。定置型の蓄電池だけでなくEVが普及すれば、エネルギーを無駄にしないサステナブルな社会の構築に役立つことができる。長年EVを販売する中で蓄積したデータや実証実験の経験をエネルギーマネジメントに生かしていきたい」(星野氏)
続いて、日産自動車と包括連携協定を結ぶ北海道美瑛町 町長の角和浩幸氏が登壇した。角和氏は2005年に美瑛町に移住。オーガニック農業に取り組む中で、次世代のために豊かな環境を守り継ぎたいと決意し、町議会議員を経て2019年から町長を務めている。
美瑛町は農業と環境を基幹産業とする。面積の7割を森林が占めており、大雪山国立公園を有する活火山の十勝岳など豊かな自然に恵まれている。「スカイライン」のファンがよく知る“ケンとメリーの木”や、Apple製PCの壁紙にも採用された“青い池”も町内にあり、観光客に人気だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.