旭川空港に近いことから多くの観光客が訪れているが、オーバーツーリズムが課題となっている。「コロナ禍前は、人口1万人ほどの美瑛町に最大で年間240万人の観光客が訪れていた。ケンメリの木の周辺の畑に観光客が無断で立ち入ったり、ごみを置いて行ったりとさまざまな問題が起きている。青い池がある地域は国立公園が含まれる原生林にあり、水源としても活用されている。環境を保護して現状維持するだけでなく、住民や観光客との新しい関係を構築することが課題だ」(角和氏)。さらに、農業が基幹産業であるため、気候変動の影響も切実であるという。
こうした状況を受けて、持続可能な観光目的地実現条例を公布するとともに、ゼロカーボンシティー宣言を発出した。この2つを結び付けた取り組みを模索する中で、ブルー・スイッチ活動を推進する日産自動車に協力を打診。2024年1月11日に包括連携協定の締結に至った。EVの売り上げに応じた森林保護の支援やEVオーナーが参加する森づくりなどの活動を行う「豊かな森プロジェクト」の他、EVでの通行を推奨するエリアを設けるなど、さまざまな取り組みを展開する予定だ。
広島大学からは学長の越智光夫氏が登壇し、カーボンニュートラルやスマートシティーに関する取り組みを紹介した。
広島大学では、2030年までにカーボンニュートラル実現を目指す「カーボンニュートラルスマートキャンパス5.0宣言」を行った。また、街と大学の教職員や学生が一体となった地域創生「Town & Gown構想」も推進しており、科学技術やイノベーションによる地域課題の解決や人材育成に向けた地域創生の場の形成に取り組んでいる。Town & Gown構想には賛同する民間企業も参加している。
カーボンニュートラルスマートキャンパス5.0宣言の一環で進めているのが、エネルギーマネジメントだ。2023年7月から東広島キャンパスの建物のおよそ6割に太陽光パネルを設置しており、設置が完了すると合計6.5MWの出力が確保される。これにより、東広島キャンパスの使用電力の20%を太陽光発電でまかなうことができる。ZEB(ネットゼロエネルギービル)化が進められている建物もある。
エネルギーマネジメントには日産自動車が協力し、EVのバッテリーを蓄電池として充放電制御を行う独自のエネルギーマネジメントサービス「ニッサンエナジーシェア」の導入第1弾が広島大学となる。大学が導入したカーシェアリングや公用車のEVに再生可能エネルギーやエネルギーマネジメントを組み合わせるだけでなく、学内向けのアプリなどさまざまなDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れた独自の取り組みを推進する。
現在、東広島キャンパスにはEV10台、普通充電器7台、充放電器が3台導入されている。このうち学生や教職員が自由に利用できるカーシェアのEVが5台で、2023年末にサービスを開始してから2024年1月末までに98人が利用した。利用データを蓄積し、環境経済学や交通工学、建築、都市計画、電力、行動科学などさまざまな研究で活用していく。
さらに、カーボンニュートラル社会の実現に資する幅広い実証研究を進めており、地中熱を活用した空調システム、水素の製造と活用、バイオ技術によるカーボンリサイクル、カーボン生態系の環境整備などに力を入れる。
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