東レは、半導体やディスプレイ向けの絶縁樹脂材料として事業を展開しているポリイミドコーティング剤(セミコファインおよびフォトニース)をベースに、ハイブリッドボンディング(微細接合)に対応した新規絶縁樹脂材料を開発したと発表した。
東レは2024年3月15日、半導体やディスプレイ向けの絶縁樹脂材料として事業を展開しているポリイミドコーティング剤(セミコファインおよびフォトニース)をベースに、ハイブリッドボンディング(微細接合)に対応した新規絶縁樹脂材料を開発したと発表した。
この材料は、従来のポリイミドコーティング剤と、同社が有する加工や接合の技術を融合したもので、金属電極を形成した半導体チップ同士を接合するハイブリッドボンディングプロセスの収率と半導体デバイスの信頼性を向上させられる。今後、試作や顧客へのサンプル提供を進め、2025年の材料認定、2028年の量産を目指す。
近年用いられている高性能パッケージング技術の代表的手法の1つとして、半導体チップを縦積みする3次元実装がある。その中でも特に、バンプピッチ(はんだで接合された隣り合う電極間の間隔)が10μm以下の微細構造を必要とする高性能半導体チップでは、ハイブリッドボンディングと呼ばれる接合技術の適用が期待されている。
ハイブリッドボンディングは従来の3次元実装技術とは異なり、バンプを用いずに金属配線同士を直接接合させ、配線距離のさらなる短縮を実現する。
さらに、ハイブリッドボンディングで異種チップの高密度実装を行うため、ウェハ基板の一方をチップサイズに加工した後に、もう一方のウェハ基板に貼り合わせるC2W(Chip to Wafer)の実装方式が注目されている。C2Wの実装方式では、絶縁材料としては二酸化ケイ素(SiO2)などの無機材料が適用されている。
しかし、C2Wの適用では現状主に2つの課題がある。1つ目は、チップに加工する際のダイシング工程で生じるシリコンダストをハイブリッドボンディング時に混入してしまい、チップの接合不良を起こし歩留まりが低下すること。2つ目は、混入したシリコンダストが半導体パッケージの信頼性を損なうリスクとなることだ。
そこで、東レは、長年蓄積してきた機能性プラスチックの設計技術を駆使し、精緻な分子設計などにより、高耐熱性、高機械物性を有する絶縁樹脂材料(ポリマー)を用いて、シンガポール科学技術研究庁における半導体分野の研究機関であるIME(Institute of Microelectronics)との連携でハイブリッドボンディングの実験実証を2020年から進めている。
加えて、IMEを含めた半導体関連各社との連携で、開発した新材料をC2W方式のハイブリッドボンディングに適用することで、異種チップを1つのパッケージに実装しチップレットの歩留まりと信頼性向上を目指す。
また、東レは今回開発した材料を半導体デバイスや電子部品に適した各種樹脂製品のラインアップに追加し、高速通信機器やサーバ用途への活用が期待される高性能な次世代半導体パッケージなどでの採用を目指す。
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