京都大学化学研究所は、室温での安定的な充放電が可能なフッ化物イオン電池向けイオン液体電解液を開発した。β水素を排除した第四級アンモニウムカチオン骨格にアルコキシ基を末端構造として導入し、化学安定性を高めた。
京都大学化学研究所は2025年4月18日、室温での安定的な充放電が可能なフッ化物イオン電池(FIB)向けイオン液体電解液を開発したと発表した。
研究では、既存のFIBで使用する固体電解質に対し、室温でのイオン伝導性が高い液体電解質に着目。電荷キャリアとして用いるフッ化物塩に対して高い溶解性を有し、室温で液体となるイオン液体電解液([MNPA][TFSI]と[NPPA][TFSI])を新たに開発した。
このイオン液体電解液は、β水素を排除した独自の第四級アンモニウムカチオン骨格に、アルコキシ基を末端構造として導入した。あらかじめβ水素を除くことで、第四級アンモニウム塩(Np2F)を塩基で処理する際に発生するβ水素の脱離反応が発生せず、化学安定性を高めた。
電気化学安定性を示す電位窓は5.8Vで、従来のフッ素化エーテル(BTFE)を溶媒とした場合の3.5Vを上回った。鉛(Pb)とフッ化鉛(PbF2)を電極とした場合では、100時間以上にわたり、安定的にフッ素アニオンを電極間でシャトル輸送できる。
この電解液を作用電極としてFIBを作製し、充放電試験を実施したところ、放電容量は150mAh/gを超えることが分かった。より酸化電位の高い銀(Ag)を電極に用いたFIBでも、室温での動作を確認できた。
車載向けの次世代蓄電池として注目されるFIBは、その多くが固体電解質を用いているが、室温でのイオン伝導性が低いことが課題だった。室温でもFIBを動作できるイオン液体電解液を開発したことで、溶解性と化学的安定性に優れた液系電解質システムの開発に重要な指針が示された。今後、性能向上への貢献が期待される。
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