京都大学は、フッ化物イオン導電性固体電解質のイオン伝導の仕組みを原子レベルで解明した。イオン半径が異なるCaとBaを混合したことで構造歪みが生じ、局所的にFの原子配列が乱れることが分かった。
京都大学は2024年9月6日、フッ化物イオン導電性固体電解質Ca0.48Ba0.52F2のイオン伝導の仕組みを原子レベルで解明したと発表した。高エネルギー加速器研究機構、ファインセラミックスセンターとの共同研究グループが明らかにした。
研究では、熱プラズマ法で製造したCa0.48Ba0.52F2を用いて、中性子回折実験により本系の原子配列と核密度分布を精密に決定した。その結果、イオン半径が異なるCaとBaを混ぜ合わせたことで構造歪みが生じ、局所的にFの原子配列が乱れることが判明した。
また、重元素を含むCaF2-BaF2系固体電解質では、中性子回折を利用することでFの原子位置を正確に決定できることに着目。物質・生命科学実験施設に建設された特殊環境中性子回折装置「SPICA(スピカ)」を用いて、Fの核密度分布を可視化し、フッ化物イオン伝導経路の特定に成功した。これにより、Fの原子配列の乱れが伝導経路内のイオン流れ(イオン伝導率)の向上に貢献していることが分かった。
ポストリチウムイオン電池の最有力候補の1つとして期待される全固体フッ化物電池では、フッ化物イオン導電性固体電解質が今後の蓄電池開発において重要な物質となる。今回、フッ化カルシウム(CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)を混合したフッ化物イオンの分布や伝導の仕組みを可視化したことで、フッ化物電池の材料開発への貢献が期待される。
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