京都大学は、室温で酸素ドープ型グラフェンナノリボンを合成可能な、新しい炭素細線製造法を開発した。貴金属触媒や炭素系触媒を上回る触媒活性で、シリコンエッチングプロセスの触媒として使用できる。
京都大学は2024年7月30日、室温で酸素ドープ型グラフェンナノリボン(GNR)を合成可能な、新しい炭素細線製造法を開発したと発表した。GNR細線の端に電子供与性置換基(含酸素置換基)を化学修飾し、シリコン(Si)エッチングプロセスの触媒として使用できる。
新しい製造法は、原料を含む電解溶液に浸した金属基板にパルス電圧を印加し、酸化還元反応により酸素ドープ型GNRを金属上に合成する電気化学製造法だ。室温下で合成するため、酸素含有置換基が分解せず、強い電子供与性をGNRに付与できる。これにより、Siの効率的な酸化に必要な過酸化水素還元能が高まり、Siプロセス触媒として利用可能になった。
GNRの触媒活性は、従来の貴金属触媒や炭素系触媒を上回り、GNRを堆積させたシリコン部分のみを、選択的かつスピーディーに溶解できる。加工後は容易に分解除去できるため、貴金属触媒の課題だった触媒残留も発生しない。
電圧印加パルスの時間幅や数の調整により膜厚を制御して、GNRに他の機能性置換基を導入することも可能だ。複数のチップや層を垂直に積み重ねて集積する3次元高集積技術(3D−LSI)製造プロセスをはじめ、Siを用いた3Dナノデバイスやセンサーへの展開が見込まれる。
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