化学工学の分野では、多くのプロセスで温度制御が不可欠です。今回は、温度制御に関連する伝熱について、基礎となる3種類の伝熱方式について解説します。
伝熱とは、文字通り「熱が伝わる現象」のことです。熱は必ず温度の高い物体から低い物体(もしくは場所)へと移動します。この温度差が、熱を移動させる「駆動力」となります。温度差が大きいほど、より熱は速く移動します。
熱の伝わり方には、大きく分けて「伝導伝熱、対流伝熱、放射伝熱」の3種類があります。化学工学における伝熱技術の応用範囲は非常に広くなっています。
このように、ほとんどの化学プロセスで伝熱の技術が使われます。伝熱の原理を理解して適切に設計/制御することが、製品の品質、生産効率、そしてプロセスの安全性に直結します。
伝導伝熱(熱伝導)は、主に静止している流体や固体の内部で起こる熱の伝わり方です。物質を構成する分子や原子が、隣り合う分子や原子に振動エネルギーを次々と伝えていくことで熱が移動します。
物質によって熱の伝わりやすさは異なり、これを熱伝導率「k[W/(m・K)]」で表します。また伝熱量(熱移動量)「Q[W]」は、フーリエの法則で表されます。
化学装置については次のような熱伝導の活用事例があります。
対流伝熱(熱対流)は、流体が移動することによって熱が運ばれる方式です。自然対流と強制対流があります。
自然対流は、流体内の温度差によって生じる密度差が原因で自然に発生する流れです。温度が高い流体は密度が低くなり上昇し、温度が低い流体は密度が高くなり下降するという原理に基づいています。例えば、暖かい空気が上昇し、冷たい空気が下降する現象が自然対流です。
強制対流は、ポンプ、撹拌機、ファンなどの外部機械の力によって意図的に作り出される流れです。自然対流に比べて流体の移動速度が速く、熱伝達効率が高いという特徴があります。
固体表面と流体間の熱の伝わりやすさは熱伝達率「h[W/(m2・K)]」で表します。また対流による熱移動量(伝熱量)「Q[W]」は、ニュートンの冷却法則で表されます。
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