電気自動車(EV)へのシフトの加速と減速により激動の車載電池市場。その最前線で車載用リチウムイオン電池を展開するのがパナソニック エナジーだ。同社に、リチウムイオン電池の材料開発で苦労した点やその解決策、開発に注力しているEV向け高機能電池材料、開発におけるデジタル技術の活用、今後の展開について聞いた。
電気自動車(EV)の製造では、走行距離の延長や安全性と性能の向上を目的に、軽量化を図れる材料、バッテリーやモーター、パワー半導体の熱マネジメントを行う高熱伝導性材料、パワーユニットの高性能化を後押しする次世代半導体材料、バッテリー材料などの高機能材料が求められている。
こういった状況を踏まえて、本インタビュー連載ではさまざまなメーカーが注力するEV向け高機能材料の取り組みを紹介する。
第4回で取り上げるのは、ニッケル、コバルト、アルミニウムから成るハイニッケル正極材を用いた高性能なリチウムイオン電池をEV向けに展開するパナソニック エナジーだ。同社 副社長執行役員 CTOの渡邊庄一郎氏に、リチウムイオン電池開発の歴史や電池材料開発で苦労した点、その解決策、現在開発に注力しているEV向け高機能電池材料、開発におけるデジタル技術の活用、今後の展開について聞いた。
電池は、化学反応を電気エネルギーに変換する「化学電池」と、太陽光や熱などの物理的なエネルギーを直接電気エネルギーに変換する「物理電池」に分類できる。化学電池は、一度完全に放電したら再利用できない「一次電池」と充電することで繰り返し使える「二次電池」に区分される。リチウムイオン電池は二次電池だ。
リチウムイオン電池の形状は主に、円筒形、角形、パウチの3種類だ。そして正極材は、コバルト系、ニッケル系、三元系などの酸化物系と、リン酸鉄リチウムなどのリン酸系に区分される。
松下電器産業(現パナソニック ホールディングス)や2011年に同社の完全子会社となった三洋電機では1980年ごろからリチウムイオン電池のベースとなる技術の開発を進めている。三洋電機は1981年に負極への黒鉛適用で特許を取得した。1991年に、松下電器産業は環状エステルや鎖状エステル、鎖状エーテルを含む電解液で、三洋電機は黒鉛と低沸点溶媒である鎖状エステルとエチレンカーボネートの組み合わせで特許を取得している。1994年に、松下電器産業は球状の高品質な人工黒鉛材料(MCMB)を負極に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を正極に用いたリチウムイオン電池を、三洋電機は天然黒鉛を負極に、LiCoO2を正極に使用したリチウムイオン電池を量産化した。
渡邊氏は「1997年に松下電器産業は、ニッケル、マンガン、コバルトで構成される三元系正極材を採用したリチウムイオン電池の量産を開始した。リチウムイオン電池への三元系正極材の採用は世界初だと考えている。しかし、1997年ごろにコバルト価格の乱高下が生じた。そのため、三元系正極材においてコバルトの比率を減らさなければならなかった」と話す。
その上で、「当時、ノートPC向けの高容量リチウムイオン電池をターゲットに正極材としてハイニッケルの開発を進めていた。ハイニッケルは従来の三元系正極材と比べてコバルトの比率を下げられる利点がある。さらに、ハイニッケルを正極材に用いたリチウムイオン電池が高容量を実現できる点が、大手EVメーカーである顧客に評価された。このEVメーカーが、ハイニッケルを正極に、黒鉛を負極に活用した当社の円筒形リチウムイオン電池を採用したため、2006年に世界で初めて車載向けハイニッケルを量産化した」と述べた。
2012年、この大手EVメーカーに同電池の本格的な供給を開始して以降、パナソニック エナジーでは、ハイニッケルを正極に、黒鉛を負極に用いた円筒形リチウムイオン電池の開発を進めている。なお、円筒形リチウムイオン電池は、正極キャップ(正極端子)、外装缶(負極端子)、絶縁板、ガスケット、正極集電タブ、負極集電タブ、高分子セパレーター、正極、負極で構成される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク