今なお工業材料の中心的な存在であり、幅広い用途で利用されている「鉄鋼材料」について一から解説する本連載。第8回は、鉄鋼材料の強さを決める因子について説明する。
機械や構造物には、必ずといってよいほど鉄鋼材料が使用されています。鉄鋼材料が使用される一番の理由は「強さがあるから」です。木材やプラスチックなどの材料と比較するとその強さは歴然であり、鉄鋼材料は強い材料の象徴となっています。
一方、鉄鋼材料は強いといっても、材質によって強さに差があります。力いっぱい負荷をかけてもビクともしない鉄鋼材料があれば、軟らかくて曲げやすい鉄鋼材料もあります。
鉄鋼材料に強さをもたらしている因子は何なのか。その1つに、前回説明した「組織」があります。それ以外にも因子があり、複数の因子がからみ合って鉄鋼材料に強さをもたらしています。今回は、鉄鋼材料の強さを決める因子について説明します。
強さといっても、強さにはさまざまな種類があります。例えば「静的荷重に対する強さ」「繰り返し動的荷重に対する強さ」「衝撃荷重に対する強さ」などです(図1参照)。鉄鋼材料は、荷重のかかり方によって示す強さが異なります。全ての鉄鋼材料が全ての荷重に対して均等に強くないのです。
実際、静的荷重に対して強い鉄鋼材料でも、衝撃荷重に対しては弱いことがよくあります。鉄鋼材料を扱う人は、鉄鋼材料にこのような強さの違いを理解しておく必要があります。
材料学的に整理すると、鉄鋼材料の強さは次のように分類できます。
上記以外にも「高温強度」や「クリープ強度」などがありますが、ここでは説明を割愛します。なお、これらの強さは材料が外力を受けたときに示す力学的な反応であることから「機械的性質」と呼ばれます。
強度とは、破壊に抵抗しようとする力の大きさのことです。
ここで、材料が静的な荷重を受けている場合を考えます。荷重を受けると、材料は荷重の大きさに応じて変形します。荷重をどんどん大きくしていくと材料の変形も拡大し、最終的に破壊されてしまいます。
荷重を受けているとき、材料の内部では「応力」が発生しています。この応力こそが破壊に抵抗しようとする力であり、材料の強度です。
なお、荷重にも「引張(ひっぱり)荷重」「圧縮荷重」「曲げ荷重」「ねじり荷重」などの様式があります。引張荷重に対する材料の強さである「引張強さ」は特に重要視されており、材料の強度と言えば一般的に引張強さのことを指します。そして引張強さは、材料の壊れにくさの指標として用いられています。
材料の引張強さは「引張試験」によって評価できます。引張試験では、材料を棒状に加工した試験片を、破断するまでゆっくり引っ張ります。そして引っ張り中に発生した最大荷重を測定し、次の計算式によって引張強さを算出します。
引張強さ(N/mm2)=引張中に発生した最大荷重(N)÷試験片の元の断面積(mm2)
引張試験を行うと、図3に示すような「応力−ひずみ線図」が得られます。応力−ひずみ線図は、引っ張り中に試験片が伸びた量、つまりひずみに対して発生した応力を示した線図です。これを見ると、引っ張り開始直後、ひずみの増加とともに応力が直線的に上昇しています。それから応力が上下する時間が続いた後、最大の応力(=引張強さ)を示してから破断する挙動が見てとれます。
応力が直線的に上昇する領域は「弾性域」と呼ばれており、試験片は伸びて変形しますが、除荷(荷重をゼロに)すると変形が元に戻ります。弾性域内で生じる変形のことを「弾性変形」と言います。
ひずみが弾性域を超えると「塑性(そせい)域」に入り、材料は元に戻らない変形である「塑性変形」を開始します。塑性変形が生じるときの材料の強さを「降伏(こうふく)強さ」といい、この降伏強さも材料の強度を評価する上で重要な指標となっています。
低炭素鋼では、図3にあるように応力−ひずみ線図上に「上降伏点」と「下降伏点」が現れます。通常、上降伏点側の応力が降伏強さとなります。高炭素鋼や合金鋼では、明確な降伏点が現れません。そこで、0.2%のひずみが生じるときの応力を「耐力」とし、降伏強さと同等に扱われます。
説明が長くなりましたが、強度とは「破壊に抵抗しようとする力の大きさのこと」であり、一般的に「引張強さ」のことを指します。材料の引張強さは、壊れにくさの指標として用いられます。また、塑性変形が生じるときの強さである「降伏強さ」あるいは「耐力」は、変形しにくさの指標として使用されます。
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