鉄鋼材料の強さを決める因子鉄鋼材料の基礎知識(8)(2/3 ページ)

» 2026年03月11日 07時00分 公開
[ひろMONOist]

硬さとは

 硬さとは、変形を与えようとする力に対する抵抗力のことです。いわゆる「硬い」や「軟らかい」によって表現される材料の機械的性質であり、変形しにくさや傷付きにくさの指標となっています。

図5 硬い材料と軟らかい材料のイメージ 図5 硬い材料と軟らかい材料のイメージ[クリックで拡大]

 材料の硬さは「ブリネル硬さ試験」「ロックウェル硬さ試験」「ビッカース硬さ試験」などの各種硬さ試験によって測定できます。いずれの試験方法も材料の表面に硬い物質(圧子)を押し込み、形成された圧痕の大きさなどを測定して硬さを評価します。

 硬さと強度には相関性があり、硬い材料は強度も高くなります。

延性(えんせい)とは

 延性とは、材料が伸びる性質のことです。材料を引っ張ったとき、破壊を起こさずに伸びやすい材料ほど「延性が高い」と言います。

 材料の延性は変形しやすさの指標となっており、加工などの場面で重視されます。例えば薄い鋼板をプレス成形して缶を製作するとき、延性が低い材料だと割れてしまい、うまく成形できません。延性が高い材料であれば、割れることなく成形できます。

図6 延性とは 図6 延性とは[クリックで拡大]

 材料の延性は、引張試験によって測定される「伸び」「絞り」が代表的な指標となっています。伸びは引張試験によって試験片が伸びた量であり、百分率で表されます。絞りは引張試験によって試験片が細まった量であり、こちらも百分率で表されます。

 一般的に延性と強度は相反する機械的性質です。低炭素鋼は比較的強度が低めですが、高い延性を示します。反対に高炭素鋼は強度が高めですが、低い延性を備えています。

靭性(じんせい)とは

 靭性とは、外力に耐え、破壊に対して抵抗する性質のことです。もろい性質を意味する「脆性(ぜいせい)」とは逆の性質として使われています。

 ここで材料の破壊様式について見てみます。材料が荷重を受けて破壊するとき、大きな変形を伴って破壊することがあります。このような破壊様式は「延性破壊」と呼ばれますが、材料自身は破壊に対して粘り強く耐えているため「靭性が高い材料」と評価されます。

 逆に材料がまったく変形せずに破壊することがあります。このような破壊様式は「脆性破壊」と呼ばれますが、材料自身は破壊に対してあまり抵抗していないため「靭性が低い材料」と評価されます。脆性破壊は突然破壊を起こすため、危険な破壊とされています。

図7 延性破壊と脆性破壊 図7 延性破壊と脆性破壊[クリックで拡大]

 このように、靭性は材料の安全にかかわる重要な性質となっています。延性が高い材料は靭性も高いことが多いため、引張試験で測定される「伸び」や「絞り」は靭性の1つの指標となります。しかし破壊力学的に見たときは、「切欠き存在時の靭性」が重要となります。

 材料に何らかの理由で切欠きが存在すると、衝撃荷重を受けたときに切欠きに応力が集中し、き裂が生じます。このとき材料の靭性が低いと材料が衝撃を吸収できず、き裂が一気に進展し、破壊します。逆に材料の靭性が高いと衝撃を吸収するため、き裂の急速な進展は起こりません。材料を破壊するには、大きなエネルギーを要します。このようにして考えると、破壊に要するエネルギーの大小が靭性であるとも言えます。

 そこで材料の靭性評価には一般的に「シャルピー衝撃試験」が用いられます。シャルピー衝撃試験では、切欠きがある試験片に対してハンマーで打撃を与え、試験片の破断に費やされたエネルギーを測定します。このエネルギーは「シャルピー吸収エネルギー」と呼ばれ、靭性の指標となっています。シャルピー吸収エネルギーを試験片の断面積で除したものは「シャルピー衝撃値」と呼ばれ、こちらも使用されることが多いです。

図8 シャルピー衝撃試験 図8 シャルピー衝撃試験[クリックで拡大]

 靭性は温度依存性があり、一般的に鉄鋼材料は低温になると靭性が低下します。低温によって靭性が低下して脆くなる現象を「低温脆性」とも言います。タイタニック号の沈没事故は、船体に使用された鋼板が冷たい海氷にさらされ、低温脆性を引き起こしたことが原因の1つとされています。

疲労強度とは

 疲労強度とは、疲労破壊に対する抵抗力のことです。ここではまず、疲労破壊とはどのような破壊現象であるかを説明します。

 通常の破壊は、図3の応力−ひずみ線図を見て分かるように、材料に弾性域を超える応力が生じたときに起こります。応力が弾性域内であれば破壊は起こりませんが、それが数万回〜数百万回と繰り返し生じると材料が疲労し、破壊されます。これが疲労破壊です。実際、機械や構造物の破損原因の約7割が疲労破壊であるとされており、これに対抗する強さである疲労強度は重要な強度となっています。[参考文献1]

図9 疲労破壊のイメージ 図9 疲労破壊のイメージ[クリックで拡大]

 材料の疲労強度は「疲労試験」によって評価できます。疲労試験では試験片に一定の応力振幅を負荷し、破断までの繰り返し数を測定します。一般的に鉄鋼材料は、応力振幅がある値以下になると、いくら繰り返し負荷をかけても破壊を生じなくなります。その繰り返し数は、通常106〜107回です。疲労破壊が生じない限界の応力値は「疲労限度」と呼ばれます。

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