アドバンストクラスの走行コースはプライマリークラスと同じだが、後半の課題はプライマリークラスの2つに「ロボコンスナップ」「IoT列車」を加えた4つとなる。前回までは、両クラスの課題は別々のものが用意されていたのだが、今回のアドバンストクラスは、完全にプライマリークラスの上位互換ということになる。
課題が2つ増えたのに、120秒間という制限時間は同じなのだから、それだけ難易度も高いといえる。さらに、ブロックdeトレジャーハンターの配置パターンは、5種類ではなく、完全にランダムだという違いもある。
IoT列車は、プラレールの走っている新幹線を止めるというもの。停止した場所により、ボーナスが0点から25点まで変わるため、うまく25点のところを狙う必要がある。なお、コース上にはWebカメラの設置が認められており、この画像から新幹線の走行位置を知ることが可能だ。
会場が盛り上がったのは、ロボコンスナップだ。こちらは、ダブルループの円の中央に置かれた人形(ミニフィグ)をロボットのカメラで撮影し、サーバに送信するというもの。人形の全身と台座が写っていれば「ナイスショット」が成立、ボーナスとして1体当たり5点を得ることができる。
このとき、人形を正面から撮影していれば「ベストショット」が成立し、ボーナスは1体あたり15点に跳ね上がるため、これをいかにクリアするかが上位入賞のカギとなる。なお、大きい円の方の人形は、向きがレースごとに変わるので、ロボット側で画像認識を行い、顔が写っているかどうか調べる必要がある。
今回、この新しい課題でベストショットを記録したのは10チーム中の3チームで、これがそのまま、競技部門の1〜3位となった。圧倒的だったのは「HELIOS」(アドヴィックス)だ。全チームで唯一、両コースで2体のベストショットを達成。また同チームはモデル部門でも最高の評価を受け、文句なしの総合優勝を果たした。
HELIOSは大きい円で、90度ずつ角度を変えて撮影。3回目の撮影の後、4回目はスキップしたので、3回目で正面が撮影できたと判断したのだろう。Rコースでは、IoT列車のみ失敗したものの、それ以外はパーフェクトを達成。これぞアドバンストクラスという、完成度の高い走りを見せた。
競技2位の「D:Drive/re」(デンソー)は、Rコースはスタートできずリタイアだったものの、Lコースで2体のベストショットを達成。面白かったのは、その撮影方法だ。大きい円では、黒い本線ではなく、黄色い円をトレースして走行。右側面のカメラでそのまま撮影していくという、効率的な方法を実装していた。
新しいポイント制の恩恵を早速受けたのが「Smart SPiNaCH」(九州産業大学理工学部情報科学科)。同チームはスタートに失敗し、走行タイムが59.8秒と、大幅に出遅れてしまった。従来ならこの挽回は難しいのだが、ベストショット1体とIoT列車で巻き返して52点のボーナスを獲得、競技3位に入った。
ETロボコンは、前回から会場が変更となり、パシフィコ横浜で開催される展示会「EdgeTech+」内で行われることになった。会場の照明がLEDとなったことで、前回は多くのチームが影響を受け、完走できないチームが続出したのだが、今回は対策が進んだようで、ほとんどのチームが問題なく走行できていたのは良かった。
その一方で、筆者が今回気になったのは、通信のトラブルが頻発したことだ。来場者で混雑する展示会場は、スマホなどの電波が飛び交っており通信が切れやすい。ハードウェアを自由に選べる競技会であればまだ対策もできるだろうが、ETロボコンは改造が認められていないため、参加者側が打てる手は事実上ほとんどない。
展示会の中での開催では、一般へのアピールという点でメリットはあるものの、電波環境の悪さはどうしようもない。それに対し、従来の会議センターの室内であれば、来場者のスマホのWi-Fiをオフにしてもらうなど、コントロールがしやすい。展示会には中継モニターでも置いて、会場を会議センターに戻した方が良いのではないかと思う。
長い時間をかけて準備をしてきたのに、環境側の問題で全力を出し切れないようでは、あまりにももったいない。運営側には、参加者が競技そのものに集中できるよう、万全の体制で臨むことを期待したい。
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