AIの活用が鍵になる後半の課題をより重視するルールに変更された2023年のETロボコン。その結果やいかに。
「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)」のチャンピオンシップ大会(全国大会)が2023年11月16日、パシフィコ横浜で開催された。この競技会は、組み込み分野の人材育成を目的として、毎年開催されているもの。全国9カ所で地区大会が行われ、上位の40チームが出場、熱戦が繰り広げられた。
ETロボコンの大きな特徴は、これがソフトウェアの大会であるということだ(なので大会の名称にも“ソフトウェア”と入っている)。競技で使うロボット(ETロボコンでは“走行体”と呼ぶ)の設計は、各チームで共通。ロボットの性能はみんな同じなので、ソフトウェアの優劣で結果が決まるというわけだ。
もう1つの特徴は、競技の結果だけで順位が決まらない、ということ。競技では、ソフトウェアのレベルが低くても、たまたまうまくいく場合もある。しかしETロボコンは、ソフトウェアの設計であるモデルを評価。競技とモデルの総合成績で順位が決まるため、モデルも良くないと優勝は難しいのだ(大会名にある“デザイン”はこのことだ)。
ETロボコンは3クラスで開催。入門者向けのエントリークラス、初級者向けのプライマリークラス、応用向けのアドバンストクラスが用意され、参加者はレベルに応じてクラスを選ぶことができる。このうち、エントリークラスは実機を使わないシミュレーターで開催。全国大会では、それ以外の2クラスが実施される。
前述のようにハードウェアは共通で、レゴのパーツで組み立てた2輪駆動のロボットを使う。ただ、これまでは「EV3」をベースにした「HackEV」を使ってきたが、生産が終了したため新たに「SPIKE」ベースの「HackSPi」を用意。前回と今回は過渡的な対応として、この2種類が使用可能となっている(次回からはHackSPiのみ)。
どちらのロボットでもほぼ同じことができるものの、HackSPiでは、Raspberry Pi 4と組み合わせることが可能だ。なお、アドバンストクラスではカメラを使う新課題が登場したが、カメラを搭載できるのはHackSPiのみ。そのため、今回のアドバンストクラスでは、10チーム中9チームがHackSPiを採用していた。
競技は、ライントレースで計測ゲートまでの走行タイムを競う前半と、課題をクリアすることでボーナスを得る後半がある。左右対称のL/Rコースをそれぞれ走行し、良かった方の成績を採用する。それは前回までと同様なのだが、今回大きく変わったのは、順位を決める得点の計算方法だ。
従来は、走行タイムからボーナスタイムを引いた秒数がリザルトタイムとなり、これが小さいほど良いスコアだった。それに対し今回は、タイム制ではなくポイント制に変更。走行タイムから計算される走行ポイントとボーナスポイントを足したリザルトポイントの大きさで争う方式になった。
走行ポイントは、基準タイム(30秒)より短かった秒数がそのままポイントとなる。従来の方式だと、走行タイムが悪かったらもう挽回は難しかったのだが、新方式なら30秒以上かかっても走行ポイントが0点になるだけなので差がつきにくい。後半の課題をより重視した方式になったといえるだろう。
それでは、2つのクラスの競技結果について、レポートしていこう。
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