和田氏 台風や地震などの災害が発生した非常時に、車載バッテリーの電力を住宅に送って活用したり、住宅の太陽光発電からEVに充電したりする方法として、V2Hが再び脚光を浴びている。CHAdeMO協議会では既にV2Hプロトコルを発行しているが、これについて動きはあるのか。
丸田氏 既に発行していたV2Hプロトコルを見直し、2022年3月に「V2H/V2Lガイドライン v2.2」として発行した。これは車載電池の大容量化、高性能化が進んでいることにより、コネクターの安全性評価やコネクター内ヒューズの遮断性能を確認して反映したものである。また、世界各国でV2H/V2Gなどの実証プロジェクトが行われていることから、CHAdeMOが規定するEVSE−車両間インタフェースと各国、地域の系統連系要件を明確化している。
和田氏 これまでV2HプロトコルはCHAdeMO規格のみだが、他の充電規格でもV2Hプロトコル発行の動きはあるのか。
丸田氏 欧米で進めているCCS陣営は、2022年にV2HやV2Gに関するプロトコルを発行したと聞いている。商品化は2023年以降になるのではないか。
CHAdeMO規格は、欧米が推奨するCCS規格、中国で法制化されたGB/T規格、テスラのスーパーチャージャー規格もあり、多様な急速充電規格が存在することから、今後ガラパゴスするのではという一部の声もあった。しかし、今回の取材を通じてちょっと違う感触を持った。
2009年から始まったEVの充電インフラ競争を第1ラウンドと呼ぶならば、CHAdeMO規格が先行し、その後、他規格が追随して参入して各地域で陣取り合戦の様相を見せてきた。現在はこの状況が続いているといえる。
しかし、2022年からChaoJiの実証試験が開始されており、実用化にめどがつくと、否応なく2025年前後からは、第2ラウンドが始まると思われる。つまり、EV販売で世界最大の市場である中国はChaoJiの設置を法制化するだろう。このため、中国で自動車を販売する各社は、大型車(EVバス、EVトラック)などでChaoJiに対応せざるを得なくなる。
結果的に、ChaoJiは中国と日本の超急速充電規格としてだけではなく、その他地域においても、第2ラウンドのワールドワイドな充電規格として影響を及ぼすのではないだろうか。また利用者からは、これまでEVの弱点として、充電時間が長いことが指摘されてきたが、ChaoJiの出現により大幅な短縮が期待される。
さらに、今回の取材では、米国電動航空機標準化団体(SAE AE-7D)からの要請により、Ultra-ChaoJiと呼ぶ大出力の充電方式が検討されていることも分かった。米国は航空機の規格に関して大きな影響力を持っており、その規格化は第3ラウンドとして、世界の航空機の電動化に対して大きなインパクトを与えるのではないだろうか。IECにも国際規格(IS)となるよう新規提案をしているとのこと。日米中の協力により、Ultra-ChaoJiが表舞台に立つ日もそう遠くないと思われる。それ以外にも、小型二輪用やe-BIKE用の急速充電も規格化しており、拡大する電動分野においてCHAdeMOは多様な取り組みを進めている。
今回の取材を通じて、充電規格は多様な分野でまだまだ発展しており、CHAdeMO協議会としても積極的に挑戦していかざるを得ないのではと感じた。
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和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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