激しく動く環境において、急速充電の規格を管理するCHAdeMO協議会は今後どのような方向性で進もうとしているのか。また、日本と中国の共同開発である超急速充電規格「ChaoJi(チャオジ)」はどこまで進んでいるのか。前回取材から約1年経過した今、現状やChaoJiの進捗状況について、CHAdeMO協議会事務局長の吉田誠氏と事務局メンバーの丸田理氏にインタビューを行った。
米国やEU(欧州連合)、中国などが脱炭素社会に向けた政策の実行を急いでいる。例えば米国のバイデン政権は、1740億ドル(約19兆円)の予算を投じてEV(電気自動車)の普及および充電インフラの拡充を推し進めようとしている。
このように激しく動く環境において、急速充電規格を管理するCHAdeMO協議会は今後どのような方向性で進もうとしているのか。また、日本と中国の共同開発である超急速充電規格「ChaoJi(チャオジ)」はどこまで進んでいるのか。前回の取材から約1年経過した今、現状やChaoJiの進捗状況について、CHAdeMO協議会事務局長の吉田誠氏と事務局メンバーの丸田理氏にインタビューを行った。
和田憲一郎氏(以下、和田氏) 2020年2月の取材では、日本と中国の共同開発である超急速充電規格について、『「ChaoJi(チャオジ)」は超急速充電の世界統一規格となるのか』というテーマでお話を伺った。さて、約1年経過した今、ChaoJiの進捗状況やCHAdeMO協議会の方向性、さらには各地域で話題となっている充電インフラ拡充の状況について教えていただきたい。
丸田氏 ChaoJiはその後、技術的なブラッシュアップを行っている段階である。前回の取材では形状が試作段階だったが、現時点では大出力でありながら、CHAdeMO規格に対しても小型軽量化できている。また、ChaoJiには日本と中国だけでなく、世界で60以上の企業と団体が参加している。ChaoJiの導入については中国が積極的であり、国家電網が中心となって2021〜2022年にかけて、高速道路に設置する計画を進めている。
CHAdeMO協議会は規格を発行する団体であり、どこにどれだけの充電設備を設置するかはわれわれの仕事とは異なる。日本の充電インフラ普及に関しては、実質的にe-Mobility Powerが担っている。e-Mobility Powerはこの4月に自動車メーカーなど多数の企業が資本参加し、第三者割当増資による資金調達を実施している。
和田氏 では次に欧州の事情について教えていただきたい。特に懸念する情報として、日産自動車が新型EV「アリア」の急速充電で日本向けはCHAdeMOを採用するが、欧州向けではCCS2(Combined Charging System、コンボ)を採用すると聞いている。これについて背景も含めて教えていただきたい。
丸田氏 以前、CHAdeMOがIEC規格となった経緯などをご説明した(関連記事:日本発のEV用急速充電規格「チャデモ」はなぜ国際標準になれたのか)。欧州委員会ではCHAdeMO規格とCCS規格を巡って論争があり、少なくともCCS規格は設置するという合意がなされ、結果的にダブルアーム方式と呼ばれるCHAdeMO規格とCCS規格の両方を有する急速充電器が増えてきた。
一方、ドイツの自動車メーカーを中心に大容量のバッテリーを有するEVも増えてきており、CCS陣営は欧州委員会の下部組織で改訂審議を行っている。インフラをカテゴリーに分類しようとする考え方であり、これまでの50〜100kWレベルはCHAdeMO方式とCCS方式のダブルアームで進めるものの、大容量バッテリーのEV、特に350kW以上はCCSに一本化しようとしている。
CHAdeMO協議会としては、実際に設置された350kW仕様の急速充電器は有効活用されておらず、今後のEV普及や電動政策に対して、大出力化に特化するのではなく、50k〜100kWでも十分であり、それらを拡充すべく地に足のついた方法が良いのではと提案している。
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