EVの急速充電、V2H、日本の電源構成……東京電力から自動車業界へのメッセージ自動車業界の1週間を振り返る(1/3 ページ)

日曜日ですね。1週間おつかれさまでした。暑くなってきましたね。今週は「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)が開催されていたので、横浜に足を運んだ方も多いのでしょうか。

» 2022年05月29日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日曜日ですね。1週間おつかれさまでした。暑くなってきましたね。今週は「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)が開催されていたので、横浜に足を運んだ方も多いのでしょうか。

 初日はほどほどの混雑でしたが、2日目と3日目はコロナ前に匹敵する混み具合でした。久しぶりの人テク展だからなのか、説明員としてブースに立つ方々も気合たっぷりの印象でした。詳しく説明してくださった皆さま、ありがとうございました。

 展示会の人テク展ではなく、学会の自動車技術会春季大会の方がお目当てという方もいらっしゃったかもしれません。春季大会の基調講演に登壇した東京電力ホールディングス フェローの姉川尚史氏のお話が大変興味深かったので、かいつまんでご紹介したいと思います。

3年間で9万km、EVで日本全国を走り込む

 姉川氏の基調講演は、「地球は先輩たちから受け継いだものではなく、自分たちよりも若い世代から借りている。高度成長期の果実をかじってきた人間としては、次の世代に対して非常に申し訳なく感じるが、きちんと保全して次の世代に受け継いでいかなければならない。温暖化を防ぐことは、子どもたち、そのさらに子どもたちの世代が生きていくために必要なことであり、年配者にとっては絶対の義務である」と気候変動対策の意義を改めて確認するところからスタートしました。

 なぜ電力会社の人が基調講演を、という方もいらっしゃるかもしれませんが、姉川氏は自動車、特に電気自動車(EV)ととても関わりが深い方なのです。

 姉川氏は1983年に東京電力に入社し、福島第一原子力発電所に勤務しました。自動車に携わり始めたのは2002年からです。東京電力の技術開発研究所にてEVと急速充電の開発に従事し、2010年には急速充電普及のためのCHAdeMO(チャデモ)協議会を立ち上げています。途中で原発に戻られましたが、2018年に経営技術戦略研究所 所長としてEVや再エネの推進に携わり、2019年からはCHAdeMO協議会 会長と、充電インフラの拡充を担うe-Mobility Power 会長を務めています。

 姉川氏は単に急速充電の開発や普及に携わるだけでなく、自身でEVを購入し、EVで日本全国を走り回っています。「自腹で高速道路料金を払い自分で一生懸命走らなければ、不満や不便さが分からず、充電インフラをどう作るべきかリアリティーが持てない」(姉川氏)というのがその理由です。

 2019年に日産自動車の「リーフ」(バッテリー容量60kWh)を購入してから、急速充電した回数は700回、走行距離は3年間で9万kmに上るそうです。

姉川氏は原発関連から離れて時間ができたのを機に、リーフで走り回っているようです[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 EVと走行距離の問題は、EVが登場して10年以上になる今も着地点が見えません。姉川氏は「大きな電池を積んで走れればいいが、電池を大きくするとクルマの値段が高くなる。息継ぎ(充電)しながら走っていくための充電器が必要だ。自動車メーカーが独自に作る充電器では負担になるので、公共の充電器である必要がある」と充電の必要性に触れた上で、東京から日本最北端の北海道・宗谷岬まで7日間で3500kmを走ったときのことを紹介しました。

 ちなみに、日産のEVユーザー向けアプリで1週間の走行距離のランキングを見ると、3500kmというのは世界でもトップの走行距離だったそうです。この時の旅程で電池を含めた車両の積載量と1kWhで走る距離などから電池の稼働率を計算してみると100%になったそうです。「それ以外の時期は稼働率がとても低かった。走って継ぎ足してまた走るという中で電池の稼働率が上がる。急速充電は電池の稼働率を上げる効果があると実感した」(姉川氏)。

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