不透明なガラス繊維強化プラスチックがクリアに、高品位なピアノブラックも可能材料技術

出光興産は、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において開発中のガラス繊維強化ポリカーボネートを展示した。量産開発にめどはついている。用途に合わせたカスタマイズにも対応できる。

» 2022年05月27日 08時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 出光興産は、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において新開発のガラス繊維強化ポリカーボネートを展示した。量産開発にめどはついており、用途に合わせたカスタマイズにも対応できる。

 ガラスに匹敵する透明さを確保しながら、ガラスから4割の軽量化が図れる。ガラスと比べて熱伝導率が低く、断熱性が求められる場所での使用にも向く。自動車用などガラスの代替の他、航空機や建築などで透明さが求められる部品に向けて提案していく。

新開発のガラス繊維強化ポリカーボネートの成形サンプル[クリックで拡大]

 開発した素材は、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の研究テーマの1つである「革新的構造材料」の成果によって生まれた。出光興産のポリカーボネート樹脂と旭ファイバーグラスのガラス短繊維の技術を組み合わせている。

 通常のガラス繊維強化ポリカーボネートは光が散乱してしまい不透明になる。素材の開発にあたって、ポリカーボネートとガラス短繊維の屈折率をそろえたことが透明度の高さに貢献している。さらに、通常よりも高温で成形することで表面が滑らかになる。

 出展したガラス繊維強化ポリカーボネートは、従来と同等の物性を確保しながら、傷のつきにくさも向上した。透明性が高いので、着色したときにガラス繊維なしのポリカーボネートと同等に色が出せるというメリットもある。不透明な通常のガラス繊維強化ポリカーボネートでは着色すると白っぽくなるため、ピアノブラックなど高品位な着色は難しい。ガラスからの置き換えだけでなく、強度とデザイン性が求められる分野への展開も検討している。

ガラスや通常のポリカーボネート、ガラス繊維強化ポリカーボネートでの物性の比較[クリックで拡大] 出所:出光興産

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