Autodesk(オートデスク) 上級副社長でクラウド&プロダクションプロダクツ、製造担当のスコット・リース氏は従来の手法の車両軽量化には限りがあり、さらなる軽量化には新しい設計手法が必要だと指摘する。軽量化の鍵を握るというジェネレーティブデザインについて話を聞いた。
現在の軽量化技術には限界がある——。燃費改善や電動車の走行距離延長に大きく影響するため、自動車の軽量化は永遠の課題だ。超高張力鋼飯、アルミニウムや炭素繊維強化樹脂(CFRP)といった部材の活用や、材料の薄肉化といったアプローチが取られている。
ただ、Autodesk(オートデスク) 上級副社長でクラウド&プロダクションプロダクツ、製造担当のスコット・リース氏はこうしたやり方で削減できる重量には限りがあり、さらなる軽量化には新しい設計手法が必要だと指摘する。軽量化の鍵を握るというジェネレーティブデザインについて話を聞いた。
MONOist ジェネレーティブデザインは自動車業界にどの程度浸透していますか。
リース氏 ジェネレーティブデザインはまだ導入の初期段階だが、自動車業界からの関心は高い。電動化が進み車両が重くなるため、軽量化のニーズが高まっている。また、バッテリーを長く作動させるためにも車両が軽いことが求められている。
ジェネレーティブデザインの採用事例では、General Motors(GM)の取り組みがある。GMはシートベルトブラケットにジェネレーティブデザインを取り入れ、部品点数を9個から1個に減らし、重量を半減させた。部品点数が減ることで、サプライチェーンもシンプルになる。オートデスクはGMのメインのCADサプライヤーではなかったが、ジェネレーティブデザインで競合他社よりも先行している点が評価され、採用に至った。
MONOist GMの他にも、デンソーやVolkswagen(VW)での採用事例もありますね。自動車業界は、自動車のどんな部位にジェネレーティブデザインを使おうとしていますか。
リース氏 人間の性格上、新しい取り組みはリスクの少ないところから始まることが多い。例えばGMは座席の下のシートベルトブラケットに取り組んだ。人目につくところにも使う可能性を示したのがVWのプロジェクトだ。ホイールやステアリング、サイドミラーなど目に見える部品にジェネレーティブデザインを取り入れ、将来のデザインの在り方を示している。
MONOist 既存の軽量化のアプローチには限界があるのですか。材料の変更や薄肉化ではなく新しい構造が必要なのでしょうか。
リース氏 ある例では、軽量化材料を採用し、シミュレーションによる設計の最適化を行った軽量化部品が、ジェネレーティブデザインでさらに46%の軽量化を達成した。形状だけでなく性能面の最適化も図るには、従来とは全く別のジオメトリが必要だった。ジェネレーティブデザインは、自然界に存在するものがデザイナーとなって、人間には考え付かない有機的な形を生み出す。自然は何十億年という経験によって、丈夫で効率的な形を獲得してきた。
伝統的な訓練を受けたエンジニアは、演算でジェネレーティブデザインと同じ結果に行き着くのは難しい。こうしたエンジニアが、ジェネレーティブデザインで論理的に性能を確保できることを納得するには、ジオメトリのさまざまなシミュレーションが必要だった。また、従来のトレーニングを受けたエンジニアは対称性を追求することもあり、当初はジェネレーティブデザインで生み出す形状の非対称性についても混乱を招くようだった。自然界には純粋に対称なものは少ない。前腕を構成する2本の骨も非対称だ。
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