ChaoJiの大出力版、電動バイク、電動航空機……CHAdeMOの挑戦は続く和田憲一郎の電動化新時代!(46)(2/3 ページ)

» 2022年09月20日 06時00分 公開

超急速充電「ChaoJi」と新たな大出力規格「Ultra-ChaoJi」

和田氏 前回の取材時には、日中共同開発の超急速充電規格「ChaoJi(超級)」について経緯を伺った。確か2022年ごろには実証試験を実施するようだが、現状ではどうか。

丸田氏 中国側での開発は終了し、実証試験の段階に移っている。具体策として、北京と上海を結ぶ高速道路の区間に、7カ所のChaoJi規格の急速充電器を設置し、車両側も変更して実証試験を行う予定となっている。すでに2か所には設置が完了し、2022年度中に7カ所の設置が完了する予定である。また日本では、日立製作所がChaoJi規格の急速充電器を開発したことから、それを用いて実証試験を行う計画をしている。実施時期については検討中である。

 もう1つのホットな話題として、「Ultra-ChaoJi」というさらなる大出力充電方式の仕様検討を2021年11月から開始した。米国電動航空機標準化団体(SAE AE-7D)から、既存のインタフェースである中国GB/Tとの互換性を前提とした大出力の検討依頼があったため、仕様検討に着手した。

 用途としては大型車両や航空機向けであり、最高出力1.8MW(=1500V×600A×2)となる。図を見て分かる通り、ChaoJiの電力線を2階建てにした構造で、最大出力はChaoJiの2倍である。上部の中央には、航空機向けのオプションとして、制御電源供給用の端子が配置されている。わずかでも航空機側の回路を簡素化することで軽量化を図るためである。

和田氏 いよいよ航空機かと考えると、とても興味深いが、これは「空飛ぶクルマ」にも展開する予定はあるのか。

丸田氏 上述の通り、大型車両や航空機向けを前提としており、空飛ぶクルマは現時点で想定していない。まだ規格検討段階であり、試作は2023年になるのではないか。なお、ChaoJiは既に国際電気標準会議(IEC)に標準化を提案済みであるが、Ultra-ChaoJiについても、既存のDC充電規格とは別の大出力充電規格として新規提案を開始している。

図表3:Ultra-ChaoJiのコネクター[クリックで拡大] 出所:CHAdeMO協議会

小型二輪用規格「e-PTW」とe-バイク用規格「EPAC-CHAdeMO」

和田氏 ChaoJi以外にも2つ規格がリリースされている。それぞれについて教えてほしい。

丸田氏 1つは、小型電動二輪用規格である「e-PTW CHAdeMO」である。最大出力10kW、電圧20〜120Vまでを想定しており、標準仕様書は既に2022年3月に発行した。なお、これはすでにアジア各国で普及が始まっている電池交換方式のeスクーターより、もう少し大型の電動バイクに適した充電規格となる。

 もう1つは、近年、人気が高まっている新しいタイプの電動アシスト自転車「e-BIKE」に対応する充電規格として「EPAC(Electric Pedal Assist Cycle)-CHAdeMO」を2022年3月に標準仕様書ドラフトとして発行した。今後は、関係企業などとも協議し、正式発行に結び付けていきたい。

図表4:適用分野に適した規格を開発[クリックで拡大] 出所:CHAdeMO協議会

和田氏 非接触充電(WPT:Wireless Power Transfer)をEVでも採用する動きがあるが、それに関してCHAdeMO協議会としても関与しているのか。またその先の技術として、「走行中ワイヤレス給電」もあるが、これに関してはどうか。

丸田氏 利便性の高さから市場ニーズが高まっており、CHAdeMO協議会としても検討してきた。その結果、2022年1月にガイドラインを発行している。なお、「走行中ワイヤレス給電」に関しては、まだ要素技術の開発段階にあり、CHAdeMO協議会として、規格化に関与していない。

和田氏 電動車の大出力化に伴い、充電ケーブルが重くなることが想定される。ドライバーがケーブルを扱わない自動充電なども視野に入るのではないか。

丸田氏 ご指摘の通り、充電ケーブルの重量増加や、操作性の低下、高電圧や大電流への安全対策などの観点から、自動接続充電器(ACD:Automatic Connection Devices)についても検討を開始している。これに関しては、日本国内において、高電圧充電器の際に問題となる法規制の観点からも有効性の検討を行っている。

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