デジタルツインを実現するCAEの真価

いろいろな形状の領域最適化をやってみようフリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(14)(5/5 ページ)

» 2022年07月26日 08時00分 公開
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終わりに

 連載第2回第3回で、「ラグランジュの未定定数法」を使って片持ちはりの剛性が最大となる形状を求め、この形状は平等強さのはりと同じ形であることを述べました。

 連載第4〜8回でトポロジー最適化手法を述べ、設計変数を要素の密度ρiとして、荷重が作用している物体に蓄えられるひずみエネルギーが最小になるような設計変数ρiを求めました。その結果、ρiが1に近いところは実体があって、0に近いところは実体がなく、実体があるところをつないだものが最適化された物体の形状であることを示しました。

 そして、剛性最小化とひずみエネルギー最小化は同じことで、多くの文献は剛性の逆数である「コンプライアンス」という言葉を使って、「平均コンプライアンス最小化問題」と呼んでいることを述べました。この方法は、ρiの分布がチェッカーフラグ状(白と黒の市松模様)の解を出しました。ρiの分布が「チェッカーフラグ状になること、グレー状のところが残ること、小骨がたくさんできることは悪だ」として、これらをなくす方向に開発が進められましたが、チェッカーフラグや小骨は、剛性最大化の解であることを述べました。

 連載第9回第10回で、平均コンプライアンス最小化問題でチェッカーフラグ問題を解決する方法として、gravity control関数をラグランジュの未定定数法の制約関数として追加する方法を述べました。制約関数が増えたので小骨がなくなって、平均コンプライアンスはチェッカーフラグがない場合ほど低減しないことを示しました。

 連載第11〜14回では、領域最適化手法として「力法」について説明しました。力法を使えばトポロジーは変化しませんが、最大応力を簡単に20〜30%低減できることを述べました。そして、領域最適化手法による形状とトポロジー最適化による形状がほぼ一致することを示し、これらの方法の有効性を示しました。

 市販のトポロジー最適化ソフトは誰がやっても同じ形を出力して少しつまらないのですが、本連載で述べたように、最適化にはいくつかの調整定数や手法があって、それらを変えるとオリジナルな最適化形状にたどり着きます。今回配布したExcelファイルでは、最適化のアルゴリズムをマクロプログラムではなく、Excelシートの式として設定しているので、式を書き換えれば自分のアイデアで最適化が行えます。ぜひトライしてください! ちなみに現在、3次元版を作っておりますので、機会があれば紹介したいと思います。

 本連載はこれで終了です。また異なるテーマでお会いしましょう!!

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Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表


1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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