ハンズオフは一般道にも広がろうとしています。General Motors(GM)は、北米で2023年に一般道でのハンズオフ機能「ウルトラクルーズ」を製品化する計画です。全ての運転シナリオの95%をカバーし、当初は米国とカナダの200万マイル(約321万km)で利用可能となります。その後、対象エリアは340万マイル(約547万km)まで拡大します。カメラとミリ波レーダー、LiDARを組み合わせたセンサーフュージョンによって、車両の周囲360度を3次元で把握するとうたっています。
高度なADAS、特にハンズオフ状態で車両が安定して走行するには、高精度地図が不可欠です。日本では、ダイナミックマップ基盤が一般道の高精度地図(HDマップ)の整備を進めています。2023年度に国道、2024年度に主要地方道をカバーする計画です。
ダイナミックマップ基盤が整備した高精度地図は、日産自動車のプロパイロット2.0やホンダセンシングエリートでも採用されています。スバルのアイサイトXも他社製ではありますが高精度地図を使用しています。このように高精度地図がADASの高度化に貢献してきた実績が、高速道路から一般道にも広がっていこうとしています。
これまで「自動ブレーキ」という言葉が消費者の誤解を招いてきたように、「ハンズオフ」も実際の機能以上に高度なものであると過信される可能性があります。
ドライバーが集中力を保って周辺を監視し、いつでもペダルとステアリングを操作できる態勢であって初めて、高度なADASによる負担軽減や安全性向上が実現しますが、運転席に座っている人間に誤解や油断があり、周辺監視を怠ると重大な事故が発生しかねません。
米国道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety)は2022年からドライバーモニタリングシステムの評価を始めます。高評価を得るには、ドライバーの目線が道路に向けられ、両手が常にステアリングを握っているか、握る準備ができていることをシステムが保証する必要があるとしています。自動車線変更を使う前に周囲を適切に確認したかどうか、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)の作動中に車両が完全停止した際にドライバーがよそ見して周辺監視から離れていないかなども評価対象となります。
ドライバーがこれらの条件を満たしていない場合には、音や表示といったHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の他、シートベルトの締め上げや振動などさまざまな通知方法で警告をエスカレートさせ、ドライバーが応じなければ通報など適切な緊急措置を講じることが求められます。
ハンズオフ対応の車両に試乗してみると、自動車メーカーによって、ドライバーモニタリングシステムが厳しく見張っている場合もあれば、ドライバーの自主性が信用されている場合もあると見受けられます。
厳しく見張るタイプのドライバーモニタリングシステムであれば、ハンズオフ機能が作動中でも頻繁にステアリングに手を添えるよう要求されます。車線変更支援を使う前に車両の斜め後ろを振り返って目視で確認する動作を行ったかどうかもシビアに見ており、目視が足りないとシステムが判断すると、車線変更支援のリクエストはキャンセルされました。
日系自動車メーカーでは、「ステアリングから手を離してもらうことや、周辺監視から目を離してもらうことが目的の機能ではない。安心して運転を任せられる結果としてハンズオフやアイズオフも可能だということ」という位置付けでハンズオフ対応の運転支援機能やレベル3の自動運転を開発しています。
“安心して運転を任せられる”という点を客観的に証明することはもちろん、自動車メーカーの意図を正しく消費者に伝え、ADASや自動運転システムを普及させるための取り組みが今後一層重要になりそうです。
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