ダイナミックマップ基盤は2021年4月7日、一般道での高精度地図(HDマップ)を整備を始めると発表した。
ダイナミックマップ基盤は2021年4月7日、一般道での高精度地図(HDマップ)を整備を始めると発表した。
同社は自動車メーカーや地図会社、車載用測量装置(モービルマッピングシステム)を手掛ける三菱電機の出資によって、日本の高精度地図を協力して整備する目的で発足した。既に、ダイナミックマップ基盤の高精度地図は国内の高速道路全てを網羅しており、日系自動車メーカーのハンズオフ対応のADAS(先進運転支援システム)での採用実績も増えている。
一般道に高精度地図が広がることで、高速道路以外の場所でもADASを高度化する土台ができる。2023年度に国道、2024年度に主要地方道の高精度地図を整備する。2019年に買収したGM(General Motors)傘下の高精度地図会社が持つノウハウを取り入れ、高精度地図整備のコストを低減しながらカバーエリアを広げる。
高精度地図はモービルマッピングシステムで収集したデータを基に作製される、“機械のための地図”だ。モービルマッピングシステムを搭載したクルマを走らせながら、カメラやレーザースキャナーでガードレール、路肩、白線、道路のカーブなどさまざまな地物情報を取得する。生データは点描で立体的に街を描いたかのような状態だが、そこから地物(ちぶつ:建物、樹木、岩石など、自然、人工に関わらず地上にある全ての物のこと)の情報を図化したものが高精度地図となる。図化する際には、車線の中央を通る線「車線リンク」も生成する。
ダイナミックマップ基盤の高精度地図を初採用したのは、日産自動車の「プロパイロット2.0」だ。日産は、ゼンリンを通じて情報を加えた地図データを使用している。レベル3の自動運転システムに対応したホンダの「ホンダセンシングエリート」も日産と同様にゼンリンが情報を加えたダイナミックマップ基盤の高精度地図を採用。なお、ダイナミックマップ基盤の製品ではないが、スバル「アイサイトX」も高精度地図を使用した運転支援機能を提供している。
高精度地図は、地図の精度を生かした自車位置の推定や車線中央のトレースによる車両制御の安定性向上、悪天候などでセンサーが周辺を認識しにくい場面での地物情報の提供などで高速道路向けの自動運転システムやADASを支援する。一般道の場合も、高精度地図によって車線中央をトレースしやすくなる他、複数の信号機がセンサーの視野に入る場合の認識支援や、右折時の車両制御の高度化などの利点がある。
一般道に高精度地図を広げるにあたって課題となるのはコストだ。例えば、日産のプロパイロット2.0を利用するにはコネクテッドサービスの年会費が発生し、プロパイロット2.0非対応の年会費と比べて税込み1万7600円の上乗せとなる。この差額は、高精度地図を無線ネットワークによってアップデート(OTA:Over-The-Air)する際にデータ量が大きくなることへの対応や、高精度地図のメンテナンスを全国で続ける目的で設定されているという。
コスト低減では、2019年に買収したUshr(アシャー)の技術を活用する。Ushrは、ダイナミックマップ基盤よりも早く2014年から北米で高速道路の高精度地図の整備を開始。2017年にGMのハンズオフ対応のADAS「スーパークルーズ」で高精度地図が採用された。Ushrが強みを持つ図化工程の自動化ツールを日本でも導入し、コストを「従来の10分の1以下、2桁分の1に下げる」(ダイナミックマップ基盤 取締役副社長の吉村修一氏)。一般道の高精度地図のメンテナンスについては、道路工事など事前に情報を把握できる場所を中心に対応する。将来的には車載センサーの情報から地物の変化点を把握できるようにしたい考えだ。
なお、Ushrをグループ会社化したことを生かし、日米の高精度地図のフォーマットや仕様を統一する。これまでの高精度地図のフォーマットは国ごとに異なっており、地域ごとにADASや自動運転システムの開発で負荷が発生していた。フォーマット統一により開発期間短縮に貢献する。
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