人が見る地図から機械が見る地図へ、ダイナミックマップが持つ可能性とは人とくるまのテクノロジー展2019(1/2 ページ)

「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)の主催者企画講演に、三菱総合研究所 次世代インフラ事業本部主席研究員の中條覚氏が登壇。「ダイナミックマップへの今後の期待」をテーマに、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における検討などを踏まえて実用フェーズに入ったダイナミックマップについて、国内外の最新動向とともに、自動運転をはじめとする多用途展開など地域での活用可能性などを紹介した。

» 2019年07月09日 06時00分 公開
[長町基MONOist]
三菱総合研究所の中條覚氏(クリックして拡大)

 「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)の主催者企画講演に、三菱総合研究所 次世代インフラ事業本部主席研究員の中條覚氏が登壇。

 「ダイナミックマップへの今後の期待」をテーマに、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における検討などを踏まえて実用フェーズに入ったダイナミックマップについて、国内外の最新動向とともに、自動運転をはじめとする多用途展開など地域での活用可能性などを紹介した。

ダイナミックマップとは?

 ダイナミックマップは、狭い意味では自動運転向けの3次元高精度地図であるが、広い意味で捉えると、精度や鮮度、網羅性が従来の地図よりも優れたデジタルな地理空間情報と考えることもできる。デジタル地図は1990年代から2000年代の前半にかけてはカーナビゲーションシステムおよびGIS(地理情報システム)などで使われていた。その後、2000年代後半からはGoogleマップの登場やGPSを搭載したスマートフォンの普及により、用途が広がっている。

 現在は自動運転や、より高度な先進運転支援システム(ADAS)の普及に向けて高精度地図は必需であり、さらに、AR(拡張現実)技術や災害対策、スポーツ分野などでも使用する動きがみられる。

 ダイナミックマップは、レーザー点群情報、画像情報、走行軌跡などからなる3次元地図共通基盤データの上に、時間の単位で区切った4層のさまざまな情報の組み合わせで構成されている。

  • 動的情報=周辺車両、歩行者情報、信号機情報などITS先読み情報
  • 準動的情報=事故情報、渋滞情報、狭域気象情報など
  • 準静的情報=交通規則予定情報、道路工事予定情報、広域気象予報情報など
  • 静的情報=路面情報、車線情報、3次元構造物など高精度3次元地図情報

 活用の一例としては、高精度3次元地図情報と、GNSS(全球測位衛星システム)、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)やレーダー、カメラなど各種のセンシング情報を重ねて比較することによる現在地の推定などが代表的なものだ。

地図の利用者が変わる

 デジタル地図は、自動運転で求められる空間情報基盤として、カーナビゲーションシステムから大きなパラダイムシフトがみられる。カーナビゲーションで使用するとき、利用者は人であり、地図を人に見せることや参考情報を表示することがその役割となる。精度は縮尺で2500分の1から2万5000分の1程度に相当し、位置正確度は標準偏差で1.75m以内となる。見た目や分かりやすさ、意匠が重視されている。これが、ADASや自動運転となると、利用者は機械(コンピュータ)であり、車両の制御に必須の情報として用いられる。位置精度は縮尺で500分の1程度に相当し、位置正確度は標準偏差で0.25m以内となり、正確さや網羅性、情報反映の即時性が求められる。

 このように、用途が変わっていくことで精度や鮮度、網羅性に対するニーズが大幅に増加している。また、中條氏は「今まで地図を作るには国に頼るしかなかったが、2010年以降の技術の進歩によって民間ベースで自前の整備が可能になった」と、地図づくりの主導権が国から民間にシフトしていることを指摘した。さらに、顧客がある程度はっきりしていることもあり、次世代の空間基盤として道路が先行しているという。

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