「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

ドライバーの体調が急変しても安全に止まるまで支援、脳機能低下の予兆もつかむ自動運転技術

マツダはドライバーに体調不良などの異変が生じた際に安全に停止するための運転支援技術「Co-Pilot Concept」を開発した。

» 2021年11月05日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 マツダはドライバーに体調不良などの異変が生じた際に安全に停止するための運転支援技術「Co-Pilot Concept」を開発した。

 システムが副操縦士としてドライバーを見守り、体調の急変や居眠りを検知した場合にはアラームで警告。ドライバーが運転を継続できないと判断すると、車外にハザードランプやブレーキランプなどで知らせながら減速してクルマを停止させる。2025年ごろから搭載する次世代版のシステムでは、必要に応じて車線変更し、他の車両がいる中でも路肩など停止できる安全な場所まで走行する。

交通事故件数自体は減少傾向にあるが、体調急変による交通事故は増加している(左)。体調急変による事故のほとんどが時速60km以下で走行中に起きている(右)[クリックで拡大] 出所:マツダ

 ドライバーの運転操作の一部を担う自動運転ではなく、緊急停止措置の一種であるため、いずれの自動化レベルにも該当しないとしている。運転する本人や、その家族や周囲の人間も安心し、運転し続けられることを目指す。第1世代のシステム(Co-Pilot 1.0)は2022年から、Co-Pilot 2.0は2025年ごろから製品化する。安心安全に運転し続けられるようにすることで、高齢者の健康寿命の延長や、公共交通が撤退した地域での移動手段の確保などの解決にもつなげたい考えだ。

Co-Pilot 2.0の開発車両[クリックで拡大] 出所:マツダ

安全な場所まで走り切る

 第1世代、第2世代ともに、ドライバーに異常が発生した後、減速して止まることがシステムの大きな役割だ。特に高速道路では、暴走を防ぐために車線を維持し、前方の車両に追突しないことが重要になるという。安全に退避できるまでは、ハザードランプやブレーキランプ、ホーンによって車外に知らせる。周囲の車両にも注意を促すだけでなく、停車後の救助も必要だ。緊急退避中の車両に関して、一般のドライバーへの周知も進めていく。

 2022年から導入する第1世代では、高速道路では車線を維持したまま停止、路肩への退避を行う。一般道でも車線を維持したまま停止までシステムで支援する。2025年に製品化する第2世代では、体調不良などの変化の予兆を検知する技術や、車線変更しながら退避する車両制御など進化させたシステムを搭載する。

 暴走防止に耐え得るよう、車線維持や自動ブレーキなど既存の運転支援機能を進化させていく。ドライバーが運転不能になった場合は、より高度な制御に移行できる余裕を持たせる。ドライバーが運転できないと判断して安全に停車させた後、必要に応じて緊急通報が作動する。ヘルプネットとも連携していく。

 搭載が確定しているのは、2022年発売のラージ商品群だ。それ以外の車種については決まり次第情報を公開する。価格については検討中だが、より多くのユーザーに使ってもらえる価格帯での量産を目指す。第1世代、第2世代ともに各ハードウェアで可能な範囲で販売後のアップデートも実施する。

ドライバーの様子や運転操作から正常な状態を学習し、そこから逸脱した異常な状態を検知する(左)。Co-Pilotのロードマップ(右)[クリックで拡大] 出所:マツダ

 システムのハードウェアのうち、ドライバーモニタリングは第1世代と第2世代の両方で搭載する。緊急停止までの周辺環境を監視するセンサーは、第1世代は新車時点で搭載するセンサーを使用する。E/Eアーキテクチャを変更せずに搭載できるようにする。第2世代は現在開発中で、新車の仕様に対してカメラ12個や高精度地図、ロケーターECU(電子制御ユニット)を追加したシステムで開発している。開発用に冗長なシステム構成となっているため、必要最小限に機能を絞り込んでいく。

 システムは、ドライバーの体の動きや運転操作の内容を常時モニタリングして正常な運転の状態を学習、そこからどれだけ逸脱するかで異常かどうかを判断する。居眠り以外に対象としているのは、てんかんや心疾患だ。

 Co-Pilot 2.0では、大学や医師とも協力しながら脳科学の知見も取り入れたい考えだ。脳機能が低下した場合、自律神経への影響を受けて、身体の揺れ方や運転操作、動くものへの目の反応などの変化が現れる。特に、運転中に特有の意識的な視線の動かし方が変わるという。いずれも特殊な生体センサーではなくカメラで検知可能な変化だ。こうした脳機能の低下の予兆を把握できるシステムにすることを目指す。

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