理化学研究所は、新型コロナウイルスに対する抗体の種類と量を1滴の血液から30分で測定できる「ウイルス・マイクロアレイ検出システム」を開発した。簡易検査の免疫クロマトグラフィーに比べ、約500倍の感度を持つ。
理化学研究所(理研)は2021年9月3日、新型コロナウイルスに対する抗体の種類と量を1滴(20μl)の血液から30分で測定できる「ウイルス・マイクロアレイ検出システム」を開発したと発表した。ヒト血清をマイクロチップに滴下し、スイッチを押すだけで反応、洗浄、検出を全自動で実施できる。
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今回開発した検出システムは、2003年に理研で開発した、有機化合物を基盤に固定化できる「何でも固定化法」をベースとする。理研ではその後、アレルゲン、自己免疫抗原、感染症ウイルスを固定化し、その場でアレルギーおよび感染症履歴を自動検査するシステムを構築。今回、それを新型コロナウイルス抗体検出システムへ応用することに成功した。
研究ではまず、光反応性高分子を被覆した基板にウイルスに含まれるタンパク質試料液をスポット状に出し、乾燥後に紫外線を照射した。その光照射による架橋反応で、タンパク質が固定化したマイクロアレイチップを作製した。
固定化するタンパク質は、新型コロナウイルスの内部にあるヌクレオカプシドタンパク質、ウイルス表面にあって感染時に重要な働きをするスパイクタンパク質の3領域(S1、S2、RBD)を用いた。検体血清中に各ウイルスタンパク質に対する抗体が存在すると結合して発光するため、その発光像をCCDカメラで撮影することで抗体の量を測定できる。感度は、簡易検査の免疫クロマトグラフィーの約500倍だ。
このマイクロアレイチップを用いて、新型コロナウイルスタンパク質に対するウサギの抗体(IgG)を調査したところ、固定化されたタンパク質が特異的に抗体を認識できることを確認した。その後、感染回復患者の抗体を定量できた。
現在、新型コロナウイルスの抗体検査は、免疫クロマトグラフィーによる定性的な簡易検査か、検査に数日〜1週間かかる定量的な精密検査しか存在しない。
同システムが実用化されれば、新型コロナウイルスワクチンの接種効果を、医療機関で効率的に判定可能になるとしている。
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