東京大学は、上気道常在菌を死滅させると、その死滅した常在菌が免疫応答を増加させ、経鼻ワクチンの効果が上がることを明らかにした。また、培養した口腔菌をワクチンに混ぜて経鼻投与した場合、経鼻ワクチンの効果が上がることが分かった。
東京大学は2021年8月20日、上気道常在菌を死滅させると、その死滅した常在菌が免疫応答を増加させ、経鼻ワクチンの効果が上がることを明らかにしたと発表した。また、培養した口腔菌をワクチンに混ぜて経鼻投与した場合、経鼻ワクチンの効果が上がることが分かった。
経鼻ワクチンは、ウイルス感染の場となる上気道粘膜にウイルス特異的なIgA抗体を誘導するため、ウイルスの感染を阻止する有効なワクチンだ。しかし、インフルエンザウイルスの抗原の元となるHAワクチンだけを経鼻投与しても十分な抗体を得られないため、ワクチンには免疫応答を増加させるアジュバント(効果を高めるために併用する物質や成分)の添加が必要となる。
研究では、マウスの上気道常在菌を抗生物質や分解酵素のリゾチームで死滅させると、その死滅した常在菌の病原体関連分子パターン(PAMPs)がアジュバントとして働き、ウイルスやワクチンの特異的な抗体応答を増加させることが分かった。
また、鼻腔内の常在菌数は口腔内と比べて10分の1〜100分の1と少なく、HAワクチンなどのウイルスの抗原だけを精製したスプリットワクチンのみを経鼻投与しても十分な抗体を誘導できないのは、上気道常在菌の数や質によるものであることが示唆された。
そこで、ワクチンに培養した口腔菌を加えて経鼻投与したところ、ウイルスに対する抗体が誘導され、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの増殖が有意に抑制されることが確認できた。
経鼻投与型のインフルエンザワクチンは、近い将来、日本でも実用化される予定だ。今回の成果は、効果の高い経鼻ワクチンの開発に役立つことが期待される。
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