京都大学は、差分方程式を用いた数理モデルにより、サンタクロースがクリスマスイブに感染症にかかっていた場合の被害を解析した。例えばインフルエンザでは、流行規模が12%増大することが分かった。
京都大学は2019年12月25日、差分方程式を用いた数理モデルにより、サンタクロースがクリスマスイブに感染症にかかっていた場合の被害を解析したと発表した。同大学ウイルス・再生医科学研究所 特定助教の古瀬祐気氏による研究成果だ。
研究では、感染症として、インフルエンザと麻疹の2種類を想定。サンタクロースが子どもたちに病気をうつす確率と、どれだけの被害が人口全体に生じるかをシミュレーションにより解析した。
インフルエンザについては、インフルエンザにかかったサンタクロースが子どもたちを訪れた場合と、そうでない場合を比較した。麻疹については、ワクチン接種率が高い子どもの集団に麻疹感染の大人1人が加わる場合と、麻疹感染のサンタクロースがクリスマスイブに多くの子どもたちを訪ねる場合を比較した。
なお、サンタクロースの滞在時間は非常に短いため、感染伝播(でんぱ)効率は「(1)通常の大人から子どもへ病気がうつる確率と同じ」「(2)通常の大人から子どもへ病気がうつる確率の10%」「(3)通常の大人から子どもへ病気がうつる確率の1%」という3パターンでシミュレーションした。
解析の結果、(1)の場合、インフルエンザの流行規模は約12%増大することが分かった。一方で、(2)(3)の場合には、流行規模の増大はなかった。
麻疹については、子どものワクチン接種率が85%の時、(1)では100%の確率で大規模な流行が起こった。(2)の場合でも77%の確率で大規模な流行が発生したが、(3)では通常の大人によって引き起こされる確率とほぼ同じだった。また、子どものワクチン接種率が95%の場合は、どのようなパターンのシミュレーションでも、麻疹の大規模な流行は起こらなかった。
近年の研究では、感染症のアウトブレークの多くは、各感染者の感染力はさほど強くなくても、一部の少ない感染者が例外的に多くの人に病気をうつすこと(スーパースプレッディングイベント)で広まることが明らかになっている。今回の研究は、スーパースプレッディングイベントの影響を数理モデルで示したことで、実際の状況にも還元し得るとしている。
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