慶應義塾大学と医学生物学研究所は、新型コロナウイルスに対する中和抗体を自動測定装置で測定するキットを開発した。1時間あたり最大で270検体の処理能力があり、血清のサンプリングから19分以内で結果を得られる。
慶應義塾大学は2021年8月18日、新型コロナウイルスに対する中和抗体を自動測定装置で測定するキットを開発したと発表した。医学生物学研究所との共同研究による成果だ。
開発したキットは、LSIメディエンスが製造する自動臨床検査装置「STACIA」で利用可能。1時間あたり最大で270検体を検査でき、血清のサンプリングから結果を得るまでが19分以内と迅速な検査が可能だ。
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新型コロナウイルスは、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質がヒトの細胞膜上にあるACE2タンパク質に結合することで、細胞に侵入することが知られている。中和抗体は、スパイクタンパク質に結合して新型コロナウイルスとACE2との結合を阻害し、細胞への侵入を防ぐ。
今回開発したキットは、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)を原理としている。スパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)を作製して磁性粒子と結合させたRBD固相化磁性粒子に、患者の血清、酵素標識したACE2を順に反応させる。血清中に中和抗体が存在すれば、ACE2はRBD固相化磁性粒子に結合できないが、中和抗体が存在すればACE2は結合できる。ACE2が結合しているかどうかは、ACE2の標識酵素が分解することで発光する基質を添加することで確認する。
また、開発したキットで得られた結果と、確立した手法で測定した新型コロナウイルス感染患者の血清の中和抗体を測定した結果を比較した。2つの結果は高い相関性を示し、本キットで中和抗体の測定が可能であることが示唆された。
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進むなか、迅速、簡便に測定できる中和抗体の測定法が求められていた。慶應義塾大学らは2020年に手動の中和抗体測定キットを開発しており、今回は多検体測定の需要に応えた形だ。開発したキットは、研究用試薬としての実用化に向け、医学生物学研究所が準備を進めている。
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