連載
» 2021年08月23日 10時00分 公開

ボルトの締め付けトルクを決める設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計(6)(5/5 ページ)

[高橋良一/RTデザインラボ 代表,MONOist]
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Lスパナについて

 今回求めた締め付けトルクとねじ呼び径の関係を図10に示します。締め付けトルクは、ねじ呼び径の3乗に比例すると考えてよさそうです。軸力は断面積に比例するので、呼び径の2乗に比例します。摩擦トルクは全トルクの90%程度です。摩擦トルクは「腕の長さ×軸力」で、腕の長さと呼び径は比例関係にあるので、摩擦トルクは呼び径の3乗に比例することになります。

呼び径と締め付けトルクの関係 図10 呼び径と締め付けトルクの関係 [クリックで拡大]

 図11は、筆者が持っているLスパナです。図11のA寸法について考えてみます。LスパナのA寸法は150[mm]くらいですので、強度区分12.9のM4ボルトの締め付けに必要な力は25[N]、つまり2.5[kgf]となります。小さいですね。手加減し、2.5 [kgf]で締め付けたら緩いのではないかと不安になります。M24ボルトについて考えてみましょう。締め付けるときに200[N]の力を出せるとすると、必要とするA寸法は4.1[m]となります。M16ボルトでも1.2[m]です。長さが1[m]くらいのトルクレンチを使った経験はありますが、4[m]のトルクレンチは見たことがありません。機械で締め付けることになります。

 以上のことから、図11のLスパナを使っている限りM6より呼び径の小さなボルトに対しては「締め過ぎ」となり、M8以上のボルトに対しては「トルク不足」になって腕の長さを長くするパイプを使う必要があります。

Lスパナ 図11 Lスパナ [クリックで拡大]

 ここまで長い道のりでしたね。連載第3回でボルトが疲労破断しない条件を述べました。この条件とは、荷重が作用したときに被締結体が離れないことでした。また、被締結体が離れないことを確認するためには、ボルトを締め付けた際に生じる軸力を見積もる必要があり、これを連載第4回で説明しました。そして、今回ボルトの締め付けトルクが求まりました。いよいよ締結部の設計です。次回は「その設計、そのボルトと本数で大丈夫?」の問いに答えられる設計法を解説します。お楽しみに! (次回へ続く

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Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表


1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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