1人当たりの出来高を上げるには、省人化があります。最初に例に挙げたラインでは3人で作業を行っていましたが、2人で行えるようにすれば1人当たりの出来高を上げることができます。ラインに投入される人員が少なくなって人件費が安くなれば製造原価が下がり、生産性を上げることができます。
省人化を行う場合は、自動設備の導入や作業標準を見直していきますが、いくら作業が減ったとしても1人分の作業が減らないと実際に人を減らすことはできません。3人分から2.5人分の作業に変わったとしても、実際には3人の作業者が必要になるためです。省人化は、1人分の作業をなくすまでやり切ることが求められます。
生産性をさらに高めるためには、省人化を1つ先に進めて「少人化」しなくてはいけません。「少人化」とは生産量に応じて、作業者を調整できるラインにすることです。生産量は毎月、毎週、毎日変化しますので、多い生産量にあわせて人員を配置すると、少ない生産量の日には人員のムダが発生してしまいます。
人数に応じた作業標準、複数の機械を使える作業員の教育、人員配置の変動に柔軟に対応できる設備レイアウトなどを作り込むことで、生産量に最適化した人員配置ができる「ムダのないライン」にすることができます。
こうした生産性改善の取り組みは、工場のQC活動で多く行われています。QC=Quality Controlは品質管理のため製品の品質維持、改善のためだけの活動に聞こえるかもしれませんが、顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)の向上、納期やコストなどの問題解決も含まれており、工場の生産性改善になくてはならない活動です。工場の現場から自主的に推進するQC活動は、日本の製造業の品質向上や生産性改善に大きな役割を果たしています。
原価低減の回で取り上げた、大部屋活動も工場の生産性改善に大きく寄与しています。大部屋活動は目的達成のため、設計から生産技術、製造、品質管理など組織を超えて関係者が集まり、課題解決に取り組む活動です。チーム間、部門間での方針や情報を素早く共有でき、意思決定をスムーズに行うことで工場の生産性改善をスピーディーにやり遂げることができます。
工場の実際の生産性改善はかなり泥臭いものが多く、なかなか一筋縄ではいきません。現地現物での確認、データを使った検証、現場作業者を含めた関係者との交渉や協力依頼など手間のかかることが多いです。しかしながら、細かい積み重ねが生産性向上につながり、会社としての利益を押し上げています。
「今日もQC活動がある……通常業務もたまっているのに面倒くさいなあ」。そんなことを思いがちですが、日本の自動車産業がここまで成長できたのも自主的な改善活動の成果です。周囲の仲間と協力し合いながら、毎日少しずつでも生産性向上に取り組んでいきましょう。
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