日産が金型なしでボディーパネルを生産、表面はそのまま塗装できる仕上がり車両デザイン(1/2 ページ)

日産自動車は2019年10月2日、同社追浜工場(神奈川県横須賀市)で記者説明会を開き、金型を使用しない金属部品の成形技術を発表した。

» 2019年10月03日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2019年10月2日、同社追浜工場(神奈川県横須賀市)で記者説明会を開き、金型を使用しない金属部品の成形技術を発表した。開発技術はサプライヤーに提供し、同年11月ごろから開発技術で生産した部品を旧型車などアフターマーケット向けに流通させる。現在は加工速度の遅さが課題だが、改善すれば新車のボディーパネルなどの生産での採用も検討する。

「対向式ダイレス成形」でパネルに複雑な形状を加工する様子。先端の工具も独自に開発した(クリックして拡大)

 発表したのは「インクリメンタル成形」と呼ばれる技術だ。汎用ロボットに取り付けた専用の工具をパネルに押し当てて、徐々に変形させることで成形する。一般に小型部品の加工に使われることが多く、ボディーパネルのような大型部品の成形に採用するのは珍しい。日産自動車では2017年に発表したインフィニティブランドのコンセプトカー「プロトタイプ9」でも取り入れた成形技術で、金型成形では難しいデザインを実現した。今回実用化したのは「対向式ダイレス成形」で、鋼板の両面に工具を配置することで、複雑な凹凸形状を高精度に加工できるようにした。

一方向ダイあり成形用の型(クリックして拡大)

 加工形状に合わせて、対向式、ダイありの一方向からの成形、ダイレスの一方向からの成形を組み合わせることで、高い加工品質を実現する。全体の加工は一方向のダイレス成形、エンボス加工など詳細な形状は対向式ダイレス成形、フランジ加工はダイありの一方向からの成形という風に使い分ける。スプリングバックや力を加えたことによる材質の変化などを織り込んで加工を制御することで、寸法精度を確保する。

 開発技術は、普通鋼板や、普通鋼板よりも引っ張り強度がやや高い範囲であれば加工可能だという。現在、アルミニウムを含めたさまざまな素材や板厚に対応するためノウハウを蓄積している。「どんなパネルでも加工できないとビジネスにならない。バリエーションがビジネスにつなげるカギになる」(日産自動車 車両生産技術開発本部 アライアンスグローバルディレクターの冨山隆氏)。

 さらに、ダイヤモンドコーティングや鏡面仕上げを施した工具を独自開発したことにより、潤滑油を使わないドライ加工が可能となった。環境負荷の低減とコスト低減を実現しながら、そのまま塗装できるほどの滑らかな表面品質を確保する。日産自動車の生産技術研究開発センターが持つ生産技術の知見と、同社総合研究所の工具材料の研究成果を組み合わせることで実用化できたという。

従来の工具と鏡面ダイヤモンドコーティングの工具での仕上がりの比較(左)。工具の先端。工具は10種類ほど用意している(右)(クリックして拡大)

 これまで、インクリメンタル成形は門型NC加工機が使われていた。日産自動車はロボットアームを使うことで、NC加工機よりも高い自由度を実現した。「NC加工機も多軸化が進んでいるが、ロボットアームはどんな角度でも加工できる点が強みだ」(冨山氏)。

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