今回から2回に分けて「品質」に関わる用語を説明します。世界に誇る日本の自動車の品質は、どのように作りこまれているのでしょうか。
ご安全に! 自動車部品メーカーで働くカッパッパです。
今回から2回に分けて「品質」に関わる用語を説明します。世界に誇る日本の自動車の品質は、どのように作りこまれているのでしょうか。
自動車は人の命を預かる乗り物です。安全を保つため製品の品質は必ず保たれなくてはいけません。日本の自動車メーカーは高い品質を武器に世界で躍進を遂げてきましたが、なぜ高い品質を実現できたのでしょうか。今回の記事では、品質の作り込みと関連する用語について解説します。専門的な用語が多く、知っているかどうかで大きく理解が変わりますので、自動車業界の方ならぜひとも押さえておきたい分野です。
そもそも「品質」とは一体何でしょうか。国際規格である品質マネジメントシステムISO 9000では「その製品やサービスが使用目的を満たしている程度(使用目的への適合性)」と定義されています。これだけでは正直、分かりにくいですね……。
簡単にいうと「お客さまの満足を得ること」ではないでしょうか? 品質は「製品のスペックや機能を満たす=不適合品ではない」と捉えがちですが、これは狭義の定義にすぎません。実際にお客さまが求めているコスト(値段)、納期も広義では「品質」の一部なのです。
例えば、100円ショップで買ったラップと定価300円で買ったラップ。値段は違えど、用途は同じです。ただ100円のラップではなかなか切れず、使い勝手はよくないですが、300円のラップではスムーズに切れ、使い心地がとてもよいという経験をされた方もいらっしゃるかと思います。
価格を重視する人は100円のラップ、使い勝手を重視する人は300円のラップを買いますが、これはどちらが正しいというわけではなく、ユーザー(お客さま)が何に重きを置くのかによって決まります。それによって求めるもの=品質が変わり、それに応じた作り込みが必要になります。100円のラップであっても穴が空いていては、製品としては不適合、最低限のスペックは満たす必要があります。
「品質」で求められるのは最終ユーザーの満足だけではありません。「後工程はお客さま」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。この考えに基づけば、自社を含んだ後工程からの要求も満足させる必要があります。自動車部品はサプライヤーから自動車メーカーに納入された後、車両に組み付けられ、最終顧客であるユーザーに届けられます。部品の基本的な機能を満たしていることはもちろんですが、車両を組み付ける自動車メーカーの要求も満たさなければなりません。
この例として、生産準備段階で納入した結果、「車両の組み付け性が悪いという意見が現場から出たので、設計を変更してほしい」という要望が出ることがあります。自動車の組み付けは秒単位で管理されるものであり、組み付け性も部品の品質の1つなのです。これは社外だけでなく、社内の工程でも同じです。品質を的確に作り込むためには「お客さま=後工程」の要求を明確し、それに応じた製造を実施していく必要があります。
品質が達成できていなかったり、不良が発生したりした場合、その損失は非常に大きくなります。リコールや不良品の交換など不良に対しての応急処置に加えて、原因追究、再発防止対策といった恒久対策で費用がかかりますし、顧客や社会からの信頼の損失にもつながります。
有名な例でいえば、タカタはエアバッグで圧倒的シェアを誇っていましたが、死亡事故につながる品質不具合がインフレーターで発見され、大規模リコールとなり製造業では戦後最大規模の経営破綻に。その後、事業はジョイソンセイフティシステムズに引き継がれています。直近でも、スバルは2018年に発生したバルブスプリングの不具合による大規模リコールにより、2019年3月期決算で729億円の「クレーム費」を計上しました。さらに、2019年1月には電動パワーステアリングの不具合で国内工場の稼働停止も発生し、国内の生産台数は前年比1割減となりました。また、部品メーカーのデンソーでも燃料ポンプの不具合で400万台を超える“メガリコール”に発展しており、品質不良により多額の損失が発生し、経営に影響を与えています。
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