慶應義塾大学は、人工甘味料として知られる糖アルコールの過剰摂取による下痢を、腸内細菌が抑制することを明らかにした。微生物が糖アルコールを消費することで、下痢の発症を抑えていることが示唆された。
慶應義塾大学は2021年6月18日、人工甘味料として知られる糖アルコールの過剰摂取による下痢を、腸内細菌が抑制することを明らかにしたと発表した。糖アルコールを栄養源とする微生物がこれを消費することで、下痢の発症を抑えていることが示唆された。
人工甘味料のソルビトールやマンニトールなどの糖アルコールは、過剰摂取すると一部の人で下痢を引き起こすことが知られている。研究グループは、下痢を誘発する個人差として、腸内細菌に注目した。
まず、腸内細菌が糖アルコール誘発性の下痢に関与しているかを確認するため、通常のマウスと、体内に細菌を持たない無菌マウスにソルビトールを投与した。その結果、無菌マウスは体重減少を伴う重度の下痢症状を起こした。
次に、特定の腸内細菌が下痢を抑制しているか調べるため、複数の抗生物質を投与した上で、ソルビトールによる下痢が生じるかを確認した。アンピシリンまたはストレプトマイシンを投与したマウスでは重度の下痢が生じ、特定の腸内細菌が下痢抑制に関わっている可能性が示唆された。
腸内細菌叢を詳しく解析すると、Enterobacteriales目またはClostridiales目細菌群の関与が判明。そのうち、ソルビトールの投与で増加したEnterobacteriales目細菌群の中に、ソルビトールを栄養源として利用できる大腸菌と利用できないプロテウス菌がいることが分かった。
大腸菌とプロテウス菌をそれぞれ無菌マウスに移植し、ソルビトールを投与したところ、大腸菌が定着したマウスは下痢にならなかった。大腸菌のソルビトール代謝関連遺伝子を変異させたマウスのうち、srlD遺伝子変異株はソルビトールを消費できなかった。つまり、大腸菌が栄養源として糖アルコールを消費することが、下痢の抑制に関わっていることが示唆された。
大腸菌は負の影響を与えるイメージが強いが、多くは病原性を持たず、人に有益な効果を与える微生物「プロバイオティクス」としても使用されている。今回の研究成果から、今後、人工甘味料による下痢抑制などの活用方法も期待される。
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