京都大学は、指定難病の潰瘍性大腸炎において、大腸粘膜にあるタンパク質を標的とする自己抗体を発見した。この抗体の測定が潰瘍性大腸炎の確定診断に有用となるため、企業と連携して測定検査キットの開発を進めている。
京都大学は2021年3月9日、指定難病の潰瘍性大腸炎において、大腸粘膜にあるタンパク質を標的とする自己抗体を発見したと発表した。この自己抗体が潰瘍性大腸炎の原因である可能性が高く、新たな診断法、治療薬開発につながることが期待される。
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜上皮の障害が病態の根幹であると考えられている。今回の研究では、大腸粘膜の上皮細胞に発現するタンパク質に着目し、スクリーニングを実施。その結果、患者の約90%に、インテグリンαVβ6というタンパク質に対する自己抗体が認められることが分かった。この自己抗体は、同じ炎症性腸疾患のクローン病患者やその他の腸炎患者にはほとんど存在せず、潰瘍性大腸炎の確定診断や病態評価などに利用できる可能性が示唆される。
また、この自己抗体が、上皮細胞の接着に関連する細胞外マトリックスタンパク質との結合を阻害することも発見した。この作用は、大腸粘膜上皮の障害と関連している可能性が高いという。
この自己抗体を測定することが、潰瘍性大腸炎の確定診断に有用となり得るため、京都大学では現在、企業と連携して測定検査キットの開発を進めている。将来的には保険適応を目指す。
指定難病である潰瘍性大腸炎は、大腸にびらんや潰瘍を形成する炎症性腸疾患で、患者数は世界的に増加している。発症には自己免疫の異常が関連すると考えられているが、原因はいまだ明らかになっていない。
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