こうした需要の急増による市場調達の大幅な増加による予想外の事態が、さらなる市場の混乱に拍車を掛け、混乱が混乱を呼ぶ悪循環を生んでいるという。
その影響の1つが半導体価格の急騰である。特定メーカーの供給が追い付いていない製品は在庫に対して通常価格の10倍以上の価格が付いているものもある。マイコン、ロジック、アナログなど幅広い半導体製品に影響が出ているという。「対面での取引は、納期も1年というような状況なので、モノによっては20〜30倍になっているものもある。また『明日納品分から値上げする』というような考えられないような取引なども実際にあると聞く」と戸澤氏は状況について語る。
また、カタログディスティへの受注が急増した影響で、これらの商社および物流機能の処理能力が追い付かず、その影響が納期遅延につながるケースも増えているという。「急激な需要増に自社の物流部門の増強が間に合わず、ほとんどの会社で深刻な機能不全が起きている。物流会社なども大混乱しているために混乱に拍車が掛かっている状況だ。モノを無事に確保しても倉庫や港で行方不明になり、納期が遅れるようなケースも散見される」(戸澤氏)。
さらに、こうした逼迫(ひっぱく)状態を悪用して増えているのが偽造品である。代替が困難な製品は市場でも在庫が枯渇しており、特に半導体の偽造品が急増しているという。「調査をすると元の印字を上書きしたリマーク品が大量に出てくる」(戸澤氏)。
これらの状況に対し、コアスタッフでは物流の効率化を進めるために長野県佐久市の物流センターのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。ロボットによる自動でのライン投入や着荷カウントやラベル張りの自動化などを推進しているという。さらに、自動倉庫ピッキングシステムを導入した新物流センターを2022年に新設する計画としている。
半導体不足の状況がいつまで続くかについてはさまざまな見通しが出ているが、戸澤氏は「現在は市場が混乱しており、二重発注なども多く、モノが作れないために諦めるようなケースも出ている。そのため近くに中規模の踊り場は来ると予測している。9月以降の市場の状況は見えない。ただ、こうした動きも一時的なもので中期では安定した成長が続くだろう」と予測する。
ただ一方で、気候変動による災害リスクやコロナ禍のような感染症リスクでサプライチェーンの寸断リスクは高まっており「安定的な製品確保」の優先順位が高まっている。「中堅以下の企業では、価格よりも安定した供給能力が重要視されるようになるだろう。実際に当社と顧客との商談でもバッファーのある安全在庫が話し合いの中心になっている」と戸澤氏は考えを述べている。
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