ガートナー ジャパンは2021年5月11日、2020年の半導体市場の動向と2021年以降の市場見通しに関する説明会を開催した。現在、各業界で深刻化する半導体不足の状況は2022年以降に改善に向かうと予想する。
ガートナー ジャパンは2021年5月11日、2020年の半導体市場の動向と2021年以降の市場見通しに関する説明会を開催した。現在、各業界で深刻化する半導体不足の状況は2022年以降に改善に向かうと予想する。
2020年の世界全体の半導体市場は4662億米ドル(約50兆6386億円)規模となり、2019年の4223億米ドル(約45兆8702億円)から約10%の2桁成長を遂げたことになる。カテゴリー別に成長率を見ると、最も成長したのはストレージ分野だった。PCやデータセンターで用いられるSSD向けNAND型フラッシュメモリが成長をけん引した。これに伴い、コンピュータ分野も大きく伸長した。この他、コンシューマー分野、スマートフォンや無線基地局向け製品などを含むワイヤレス分野も伸びた。
インダストリアル(産業)分野はほぼ横ばいの成長率だったが、医療や監視カメラ、IoT(モノのインターネット)など設備のリモート化を促進する領域は良好だった一方で、工場の設備投資や交通用機器、レジャーなどの領域は不調に終わるなど、分野内でも濃淡が見られた。
オートモーティブ分野は全カテゴリーで唯一のマイナス成長となった。自動車の生産台数が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による台数低迷の時期が原因だという。
2021年の市場見通しについては全カテゴリーで前年比10%以上の成長を予想しており、最も成長を遂げるのはオートモーティブ分野だとする。これは、2020年には自動車の生産台数がマイナスとなったものの、2021年には例年の水準に持ち直すと期待される点が大きい。また、オートモーティブ分野に次ぐ成長分野としては、5G対応スマートフォンの市場拡大が期待されるワイヤレス分野を挙げる。
現在さまざまな業界で問題化している半導体不足について、リサーチ&アドバイザリ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー 半導体/エレクトロニクス・グループ ディレクター アナリストの山地正恒氏は「2021年も厳しい供給難の状況がおおむね継続するが、同年10〜12月頃からは不足感が緩和されていくと予想している。2022年は年間を通して在庫水準は安定に向かう可能性が高い」と説明した。
また、米国テキサス州を襲った寒波やルネサス エレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)における火災などで半導体不足が続く状況については、生産能力の増強によって2022年以降は改善に向かうとして「(悪影響は)長期的には続かないと見ている」(山地氏)という。特にオートモーティブ向け半導体は早期に半導体不足が発生した分、問題が解消される時期も早まると予想する。
半導体ベンダーごとの市場シェアを見ると、5G対応スマートフォンの登場で、スマートフォン1台当たりに搭載する半導体が高価格化したことなどが要因となって、クアルコム(Qualcomm)や台湾のMediaTekが大きく成長した。山地氏は「MediaTekの成長は、米中対立の流れが半導体輸出規制に及んだことで、中国企業からの引き合いが増加したことも成長を後押しした」と指摘する。
成長率が最も高かったのはNVIDIAで、前年比45.2%の成長を遂げた。NVIDIAがGPUを供給する任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」が巣ごもり需要で売り上げを伸ばした他、ゲーミングPCの出荷台数増加や仮想通貨のマイニング用途の需要が伸びたことが要因だという。
2021年以降の半導体市場についてはオートモーティブ分野やインダストリアル分野が成長していくとする。オートモーティブ分野はADAS(先進運転支援システム)などの用途で、インダストリアル分野は農業など従来人手作業が中心だった領域でのオートメーション化が後押になって成長すると予想する。
今後の半導体市場におけるトレンドについて、山地氏は「長期的に注目しているトレンドの1つがロボティクス分野だ。自動配送などの分野で使われる、ある程度の自律的な判断能力を有する移動ロボットなどの半導体需要も増えてくる可能性がある」と語った。
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