ルネサスエレクトロニクスは2021年3月30日、オンラインで会見を開き、ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で発生した火災の影響について説明した。
ルネサスエレクトロニクスは2021年3月30日、オンラインで会見を開き、ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で発生した火災の影響について説明した。
2021年3月19日午前2時47分、300mmウエハーの生産ラインであるラインN3棟1階の一部工程で火災が発生、同日午前8時12分に鎮火した。出火元はN3棟の1階にあるめっき装置で、過電流が発生したことで発火に至った。過電流が発生した原因や、発火に至った経緯は明らかになっていない。
人的被害や工場の建屋への被害はなかったが、N3棟1階のクリーンルーム1万2000m2のうち5%に相当する600m2が焼損した。なお、200mmウエハーの生産ラインであるN2棟やWT(ウエハーテストライン)棟は稼働しており、製品の出荷も継続している。
会見に出席したルネサスエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は、復旧でボトルネックになると想定していたハリの補強やススの洗浄などの作業の順調さをアピールし、当初から目標としている「1カ月以内の生産再開」に手応えを示した。生産再開後4月末までに焼損した設備の調達を完了できた場合、代表的な生産リードタイムの製品であれば5月下旬からN3棟1階に残存した仕掛品の製品出荷を開始できるとしている。現時点では、仕掛品の4分の3程度が無事であることを確認済みだ。
火災が発生したN3棟1階にある製造設備は、全体の90%まで状況確認が完了した。当初は焼損した装置が11台と発表したが、装置メーカーの支援の下で確認した結果、追加で12台の被害が判明した。合計23台の製造設備のうち、11台は4月中に調達できるめどが立っている。
現時点での納期の回答が「5月中」「6月中」という設備もあるが、柴田氏は「23台のうち、2割から3割の調達が4月末から遅れても、5月下旬ごろから出荷再開の見通しからは大きく逸脱しない」と説明した。また、納入時期が確定していない設備もあるが「回答待ちの段階であり、いつ調達できるか分からないという状況ではない」(柴田氏)としている。
N3棟で生産する製品のうち、約3分の2がルネサスの他拠点や外部で代替生産できるという。N3棟の生産量の1.5カ月分を代替生産する場合には、外部では必要な生産量の100%を、内製では82%をカバーできるとしている。N3棟の生産量の2カ月分を代替生産する場合、外部では必要な生産量の90%を、内製では73%をカバーできる見通しだ。
業績への影響については、1カ月当たり130億円を見込む。生産能力が火災前の100%に回復するまで1.5カ月かかった場合は175億円、2カ月かかった場合は240億円の減収となる。
日数 | 日付(4月以降はおよその時期) | 再開後の生産 | 仕掛品 | |
---|---|---|---|---|
0 | 3月19日 | 火災発生 | - | 後工程の仕掛品を出荷中 |
2 | 3月21日 | 装置メーカーが現場で調査 | - | 同上 |
4 | 3月23日 | 装置メーカーが派遣した外部の専門家が調査 | - | 同上 |
6 | 3月25日 | 消防による調査 | - | 同上 |
10 | 3月29日 | クリーンルームの梁を補強 (想定より11日短い3日間で完了) |
- | 同上 |
11 | 3月30日 | 会見 | - | 同上 |
15 | 4月3日ごろ | - | - | 組立テスト工程の仕掛品が出荷し終わる |
4月中旬 | クリーンルーム復旧 | - | ウエハーテスト工程の仕掛品を出荷 | |
30 | 4月18日ごろ | 生産再開 | 前工程:ベースレイヤー(40日間) | ウエハーテスト工程の仕掛品が出荷し終わる(出荷ゼロ) |
42 | 4月30日 | 必要な設備の調達 | 同上 | (出荷ゼロ) |
60 | 5月18日ごろ | - | 同上 | N3棟1階に残存した仕掛品の製品出荷開始 |
69 | 5月27日ごろ | - | 前工程:メタル(20日間) | (出荷回復) |
89 | 6月16日ごろ | - | ウエハーテスト(15日間) | (出荷回復) |
90 | 6月17日ごろ | 代替生産の出荷が立ち上がる | 同上 | N3棟2階に残存した仕掛品の製品出荷 |
100 | 6月27日ごろ | 火災前の出荷量に回復 | 同上 | - |
104 | 7月1日ごろ | - | 組み立てテスト(15日間) | - |
120 | 7月17日ごろ | - | 生産再開後のウエハーが出荷 | - |
日数は火災発生からの経過日数。会見以降の日付はおおよその時期を示す。再開後の生産のリードタイムはモデルケース。 |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.